異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

毛玉観察記録 ◆ヴィクター

 拾った毛玉はどうやら人間だったらしい。
 (にわか)には信じがたい話だが、この目で見たからには受け入れざるを得ない。

 不本意ながら毛玉の面倒を見る事になったため、観察記録をつける事とする。


◆某日

寝ている。
起きない。

仕方なく巣箱を抱えて本部に連れて行く。
片時も離すな、などとわけのわからない事を毛玉が言ったせいだ。

カイルとキースを交えて話す。
なかなか信じない。
毛玉も人間に戻らない。
どいつもこいつも。

結論。
毛玉が人間に戻るためには月が必要。
次の月夜を待つしかない。

第三に至急の応援要請あり。
魔獣が西の街道に出現との事。

現場へ急行、キースに一時的に毛玉を託す。
狼型の魔獣の群れ。速やかに討伐する。
キースから毛玉を回収。安否を確認、生きていた。

任務を終え戻る道中で毛玉が就寝。
寝すぎだ。

本部に帰着。
毛玉は起きない。巣箱に入れておく。

書類仕事を終え帰宅。
ロッテンマイヤーに毛玉を洗わせる。それでも起きない。大丈夫なのか。

夕食。
毛玉は起きない。
が、規則正しく呼吸はしている。触れた毛並みも温かい。
別で夜食を用意しておくよう使用人に指示。

深夜。
毛玉が起きないせいで夜食が冷え切った。
温め直させようと厨房に行く。使用人から仰天された。何か文句でもあるのか。

運ぶと言われたが、無視して夜食を持って部屋に戻る。
毛玉がやっと起きていた。別に安堵などはしていない。

夜食を口にし、毛玉は千切れそうなほどに尻尾を振って喜んだ。
さっきまで死んだように眠っていた癖に、まったく極端な奴だ。額を弾いておく。

寝かせようと巣箱に入れたら文句を言われた。
片時も離すな、とは寝る時もなのか?
仕方なくベッドに入れてやる。そのまま就寝。


――これから毎日これが続くのか。
面倒な事この上ない。
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