関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
「そんなことないわよ。立派な公爵家の跡取りだわ。アローグレイ侯爵家の方々も褒めていたのよ――あっ、みんなからお土産があるの」

 シェスティが手で示すそばから、護衛騎士たちが両腕いっぱいの箱を持って、玄関からどんどん入ってくる。

「……馬車一台分かな?」
「あと、あなたも鍛えてみたらって言っていたわ」
「あの兄弟たちと一緒にするなよ。俺には剣の才能は、ない。商才で生き抜く」

 断言した兄の後ろで、立ち直った父が大好物の隣国産土産を見つけて、喜んでいた。

 すもと母が「あんな人はいいの」と言った。

「大事な用があるのよ。帰ってきたばかりで悪いけれど」
「今、あんな人はいいって言った?」
「カディオ殿下が待っているよ」

 シェスティは「は」と固まった。

「…………来てるの? 今? 彼が?」
「そうよ」

 なぜ、と頭にいっぱい疑問符が浮かんだ。

「あの、そもそも手紙に確か動悸があるとか――」
「あまりお待たせしては悪いわ。さ、行ってあげなさい」
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