関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
 先程まで兄のほうが見ていてくれたらしい。
 母があとはやっておくとのことで、シェスティは執事に案内され、カディオが待たされているという客間へと移動した。


 その客間にいた人を見て、正直シェスティは驚いた。

(えっ、誰……あ、カディオか)

 ぱっと顔を向けてくる反応は、三年前まで見ていた彼と重なった。

 三年ぶりに見るせいだろう。顔を見てみれば、確かにカディオだ。
 光があたると青見が混じっても見える黒い髪も、次第に丸美が消えて長くしゅっとしたもふもふの獣耳も、彼そのものだ。

 ソファの上でぴんっと立った大きな尻尾は、久しぶりのせいか、ボリュームがたっぷりに見える。

(隣国ではあまり獣耳と尻尾は見なかったものね)

 旅行者、留学者、仕事をしている者たちはいたが、尻尾まで持った獣人族というのは、実は数が少ないのだ。

 尻尾まであるということは、それだけ〝血が濃い〟らしい。
 同じ獣人族から一目置かれている。

 とはいえシェスティが注目したのは、そこではない。
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