関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
 騎士でもないのに鍛えられて引き締まっている彼の肉体に、少しだけ『まぁ』と見とれてしまった。

(彼、美しい青年だったけど、それがこんなにも男らしくなるなんて……)

 実のところ、なんとも好みの体格になっていて驚いたのだ。

「シ、シェスティ……?」

 カディオが間もなく言った。

「ご無沙汰しております、殿下」

 シェスティはハタと思い出し、ひとまずレディとして挨拶をした。スカートの左右をつまんで軽く頭を下げる。

 する、なぜかカディオが慌てて立ち上がった。

「やめてくれっ」
「え?」

 彼が、ハッと自分の口を手で押さえる。

「そ、その……俺と君の仲だ。いつも通りで、いいから……それとも、向こうでいい人でもできたのか?」
 気のせいか、言いながらも彼はこの世の終わりみたいな顔色になっていく。

「はい? いい人?」
「向こうのアローグレイ侯爵家の三人は、君が手紙で散々褒めまくった騎士でもあるとは聞いた。君は、その……意外と騎士が好きだと……」

 家族は、いったいどれだけ内容の手紙を彼に教えたのだろう?
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