関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
 まさか家族にあてた話を言いふらされとは思っていなかったから、シェスティは『まったく』なんて思ってしまう。

「私が婚約するとしたら家に従わなければならないのだから、いい人もつくるはずがないでしょ。それに、勉学が進んでいる国よ? そもそもそんな暇はなかったわ」
「そ、そうか」

 彼はそのまま腰かけてしまう。

 二十四歳になって子供っぽさなんて、どこにもない。

 けれど、カディオは何も言わず見つめてくるだけだ。シェスティは小さくため息を吐く。

(相変わらず、有能な女性が嫌いなのね)

 昔から自分につっかかってきたのも、そのせいだろう。

(それなのに、なぜ来たのかしら?)

 ひとまず彼のいる席へ歩み寄ったものの、シェスティは首をひねったところで「あ」と思い出す。
「そういえば、変な手紙が来たのだけれど。あなたが仕事をほったらかして休みを取っているだなんて、よっぽど体調が悪いの?」

 休みを取ったから、平日に公爵邸になんているのだろう。
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