関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
 カディオの獣みたいな金色の目もよく見えた。口を開いた際に、人族よりも少しだけ目立つ犬歯だって見える距離だ。

「わ、分かったわ」

 驚きで一瞬声が出ず、ようやく間を置いて、そう言うことができた。

「シェスティはまだ紅茶を飲み終えていないだろう。それがなくなるまでは……俺も、少しここで休みたい」

 やはり体調がよくないのだろう。

(王宮であまりそういう姿を人に見せたくないのかも)

 彼が強がりなのは、昔から一緒に過ごしていて知っている。

 熱発していたのに『シェスティのパートナーは、俺だから』と言って、とある誕生日会にこられた時には周りも騒然としていた。

 結局、直後に倒れて、シェスティは彼を看病しながら一緒に帰ったのだ。

「ええ。あなたがそれでいいのなら」

 今も強がりが変わっていないとか、そこは子供ねぇ……なんて生ぬるい目を向けて微笑みながら、シェスティは承知した。

 少し下がっていた彼の尻尾か、途端にぶんぶんと振られていた。

          ◇◇◇
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