関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
 帰国をしても、予想に反してとくにすることはなかった。

 縁談の候補に挙がっている令息と引き合わせられるのではないかと思って、クローゼットルームも整理したが、母からはとくに集まりや茶会の出席の予定もないと聞かされる。

 帰国したばかりなのでゆっくりしているといい、というのが父の意見だ。それは母も同じらしい。

(留学を急きょ終わらせなくても、よかったのではないかしら?)

 二日目、シェスティは屋敷の二階にある私室で紅茶を飲んでいた。
 なんとも優雅な時間が漂っている。

「暇だわ……」
「それはお嬢様が有能さのあまり、帰国後の片付けも確認も、すべて終わらせてしまったからです」

 三年ぶりだというのに、元シェスティ付きのメイドの意見は、手厳しい。

「寂しくなかったの?」
「ええ、寂しかったですよ。あまり間隔もあけずわたくしたちにまで手紙をいただけて嬉しかったのですが……本音を言えば、もう一人忘れているお方がいると思うのですけれどね」

 帰国後、友人たちから届いている手紙をまた机に追加したメイドが、疲労感を漂わせて、目頭にきゅっと皺を寄せる。
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