関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
(この父と子、こうするとそっくりなのよね)

 その顔が好きで、母が普段からツンとしている、というのは女同士の話しの〝秘密〟である。


 父と兄によってシェスティは回収され、蔵書室から出された。

 物理的に、二人に上半身と下半身を抱えられ、近くのサロンに連行されているところだ。

「まったく、お前ときたら……その行動力は獣人族の令嬢並みだな……」
「お父様が毎回王宮に連れて行ったおかげですね」
「べ、勉強がてらよかっただろう。殿下を教えている最高の講師に教えをもらえた」

 何やら、父が早口になる。
 それをシェスティは不思議そうに眺めていた。

「まぁ、そうね。楽しかったわよ。剣術も触らせてもらったし」
「だよな、お前に木刀で追いかけ回されたのを思い出した……」

 兄がげんなりとそう言ったところで、シェスティに視線を戻してくる。

「とろでお前は、運ばれ慣れてるな? まさか、アローグレイ家に迷惑はかけていなかっただろうな?」
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