関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
 実に子供っぽい。

 出会った際、かなり落ち着きがない王子様だなとシェスティは思っていた。

 頭の獣耳は忙しなくぴくぴく揺れていたし、尻尾はぶんぶん振って服がはためいていた。顔が赤くても視線をかなりの速度で左右に逃がされる。

『緊張しているようですが、ひとまず落ち着いてください?』

 そこで、やんわりと口にしてみた。

 そうしたら真っ赤な顔になったかと思うと、十三歳の彼に、過剰反応なくらい文句を言われたのだ。

 それからずっと、自分のテリトリーに敵が入るのを嫌がるみたいに、シェスティがくるたびカディオは飛んできた。

「たぶん、威嚇だと思うのよ」
「威嚇、ですか……」

 ある日、カディオをどう思うか、と妙な質問を彼の教育係に尋ねられた際、シェスティはそう答えた。

 カディオが、一方的に嫌っている。


 それはシェスティが十五歳、彼が二十一歳を迎えても続いた。

(いい加減大人になれないのかしら?)

 そもそもこの面倒臭い関係が続いているのは、なぜだろう。
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