関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
 そもそも勉強時間も増えているのに、わざわざ喧嘩を売られに彼と顔を合わせ、競い合いやらをさせられるとか、時間の無駄だ。

 正直、学ぶこともまだまだある。

 彼のほうは六歳年上だから義務教育も先に終わっているとはいえ、シェスティは違う。相手にしていられない。

「嫌なら、私の顔を見なければいいでしょ」

 その日のパーティーでシェスティはそう言い返し、彼に背を向けた。

 またやっているよと周りの人々は苦笑していた。

 いつもの喧嘩だろう、と。

(私、隣国へ留学するわ)

 シェスティはそう心に決めていた。
 国内には、人族女性たちの優秀な外交官も多くいる。

(そうね。国内だと獣人貴族のほうが人気があるし、私は外交関係に役立って、バリバリ働くのもいいかも)

 そして後日、シェスティはそんな軽いノリで単身、隣国へとわたったのだった。

 ◇◇◇

 シェスティは隣国で学校にも入り、新しい環境で刺激を受けながら勉強を楽しんだ。

 世話をしてくれたアローグレイ侯爵家の人々はとても優しかった。シェスティよりもかなり年上の兄たちが三人いて、年の近い末娘のティレーゼとは大の仲良しになり、三年が過ぎるのはあっという間だった。
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