関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
 家族の目もない。
 そのうえ、これまでずっとあった『狼王子に会いに行きなさい』と言われることもない。シェスティは自由を謳歌した。

(このままここで外交仕事につくのもいいかも)

 隣国の王都には、アルヴエスタ王国出身の仕事人も目立った。


 そんなある日、母国のディオラ公爵家から手紙が届いた。
 世人式をすっぽかしたことへのお叱りが書かれていたが、こちらで通っていた学校の修了式と重なっていたので、仕方がないと実家も納得はしていた。

 だが、今回はそれが用件ではなかった。

「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」

 病気だという言葉は一切書かれていない。

 シェスティは首をひねり、ひとまず帰国することにしたのだった。


 隣国から、アルヴエスタ王国の王都まで三年ぶりの旅となった。

 国境でわざわざ王家から派遣された獣人族の護衛団がつき、この国の一回り大きいことで知られている速馬で進む。
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