ファンは恋をしないのです
「朋希くんがそこにいた。あれはもう確実に。でさ、シャッフルメドレーとかでフォーカクの曲も朋希くんが歌ったじゃん?良すぎー!」
「あー決め台詞貰ってたね~!あれ良かった!」
「でしょー!?良すぎ!中の人感もうすーくあったけど、朋希くんがやりそうなギリギリって感じでさぁ…。かっこよかったよねぇあれ。」
一目惚れとかそういう類のものではない。好きとか嫌いとかそういうことではなくて、プロのお仕事を見せていただいたことに、単純に感動しているのだ。ただ、それを表す言葉は『かっこいい』しか出てこないのだけれど。
「なんかさ、もう好きじゃん、めちゃくちゃ。」
「…プロのお仕事って感じが好きなの。」
「三澄さんが好き、ってことじゃなくて?」
「三澄さんのプロ意識に感服。すごい。かっこいい。かわいい。全部あった。すごい。もー本当にすごい。」
「SNSとかラジオとかのチェックまで始めちゃった?」
里依は首を横に振った。
「…深入りしてはならない。さすがに戒めてる。目が合ったと思ったのは私の勘違いで間違いないし、本来絶対に私は声優さんたちの視界に入ってはならない。邪魔しちゃダメ。」
「変なとこ神経質だよね、里依って。」
「身分をわきまえてるの!私たちは一般人。あちらは、キャラクターに新たな生命を吹き込む人、ハッピーを生み出す人なの。」
「SNSのチェックくらい良くない?フォロワー増えたら向こうも嬉しいだろうし。」
「…まず、私がフォローをした瞬間に仮に向こうがスマホを握ってて通知がいって、おや?となって覗かれた時が怖いから無理。」
「そんな偶然ある?」
「絶対ないって言えないから、こっそりたまーに見に行くくらいにするよ、私は。」
「熱心なんだかよくわかんないね。でも、なんか沼にどっぷりって感じで、そういう里依見るの好きだから楽しい~。」
「…他人事だと思って!次のライブは怜花の番だし!」
「そうなんだよね~!絶対座席をもぎ取るよ!」
「手伝う~!」
次のライブの情報を二人で確認しつつ、乾杯をした。
* * *
「おーい、むせてばっかりのそこの人?べた褒めだぞー。」
「…静かにしろ!気付いたら多分パニックになるタイプの人だ!」
「かもなぁ。本来こっちのファンなのに、お前に盗られそうなんだけど?」
下ばかり向いて落ちた前髪の奥から見える目が、目の前のにやっとした表情を浮かべる男を睨む。
「楽しんでるな、思いっきり。」
「照れてるな~思いっきり。耳、赤い。」
「…わかってんよ、そんなこと。」
「あー決め台詞貰ってたね~!あれ良かった!」
「でしょー!?良すぎ!中の人感もうすーくあったけど、朋希くんがやりそうなギリギリって感じでさぁ…。かっこよかったよねぇあれ。」
一目惚れとかそういう類のものではない。好きとか嫌いとかそういうことではなくて、プロのお仕事を見せていただいたことに、単純に感動しているのだ。ただ、それを表す言葉は『かっこいい』しか出てこないのだけれど。
「なんかさ、もう好きじゃん、めちゃくちゃ。」
「…プロのお仕事って感じが好きなの。」
「三澄さんが好き、ってことじゃなくて?」
「三澄さんのプロ意識に感服。すごい。かっこいい。かわいい。全部あった。すごい。もー本当にすごい。」
「SNSとかラジオとかのチェックまで始めちゃった?」
里依は首を横に振った。
「…深入りしてはならない。さすがに戒めてる。目が合ったと思ったのは私の勘違いで間違いないし、本来絶対に私は声優さんたちの視界に入ってはならない。邪魔しちゃダメ。」
「変なとこ神経質だよね、里依って。」
「身分をわきまえてるの!私たちは一般人。あちらは、キャラクターに新たな生命を吹き込む人、ハッピーを生み出す人なの。」
「SNSのチェックくらい良くない?フォロワー増えたら向こうも嬉しいだろうし。」
「…まず、私がフォローをした瞬間に仮に向こうがスマホを握ってて通知がいって、おや?となって覗かれた時が怖いから無理。」
「そんな偶然ある?」
「絶対ないって言えないから、こっそりたまーに見に行くくらいにするよ、私は。」
「熱心なんだかよくわかんないね。でも、なんか沼にどっぷりって感じで、そういう里依見るの好きだから楽しい~。」
「…他人事だと思って!次のライブは怜花の番だし!」
「そうなんだよね~!絶対座席をもぎ取るよ!」
「手伝う~!」
次のライブの情報を二人で確認しつつ、乾杯をした。
* * *
「おーい、むせてばっかりのそこの人?べた褒めだぞー。」
「…静かにしろ!気付いたら多分パニックになるタイプの人だ!」
「かもなぁ。本来こっちのファンなのに、お前に盗られそうなんだけど?」
下ばかり向いて落ちた前髪の奥から見える目が、目の前のにやっとした表情を浮かべる男を睨む。
「楽しんでるな、思いっきり。」
「照れてるな~思いっきり。耳、赤い。」
「…わかってんよ、そんなこと。」