ファンは恋をしないのです
2.私のこととは限らないし?
* * *
2週間後の20時30分過ぎに珍しく着信で、スマートフォンが震えた。電話の主は怜花だった。
「はーい、どうしたの?」
「今すぐカラチャンを見なさい!」
「へ?」
「んで30分あたりに戻して追いかけな!」
「なんで?」
「里依のこと、三澄さんが喋ってるから!」
「え…は、はぁー!?」
だらっとスマートフォンを握って、日用品で買うもののリストを作っているところだった。慌てて動画アプリを起動し、『カラチャン』と呼ばれる番組をタップした。このチャンネルではアプリや、コンテンツ全体の情報を知らせてくれたり、声優を交代で呼んでトークを繰り広げたりする。今日が三澄の出演回だということは知っていたが、里依はこのチャンネルを熱心に追いかけるほどではなかった。この番組の後にSNSで主な最新情報が共有されるため、そこで充分間に合うからだ。見ないでおいたのは、三澄が出るものを追いかけたら、また沼に片足を突っ込んでしまう気もしたからだった。
実際は生放送で行われているが、後から追いかけてみることもできる。怜花に言われた通りに、里依は30分頃まで飛ばした。怜花との通話はまだ切っていない。
『最近嬉しかったことっていうテーマだけど、誰からいく?』
『あ、じゃあ僕からいいですか?』
『ぜひぜひ!』
三澄はゲストで、MCは別の声優だった。今回はMC2人で三澄がゲストという3人での生配信らしい。
『この前、二階堂と居酒屋行ったんですよ。ライブの打ち上げを二人でやろうって話をしてて。』
『あー二人仲良いもんね。』
『同期なんでね。それであの、本当に偶然なんですけど、隣に座っていた二人組が≪スターカラット≫のファンで。』
『えっ、すご!そんなことあるんだ!なんでわかったの?』
『これが本当にびっくりなんですけど、先日のライブにいらっしゃってた方だったみたくて。』
『えー!』
「…待って、怜花。」
「いいから止めないでちゃんと見なさい。」
「先が怖い。」
「止めない!」
「はぁい…。」
『本当にありがたいことに、すごくライブを楽しんでくださったみたいで、ずっと2人で楽しそうにお話ししてらしたんですよね。あ、その居酒屋がこじんまりとした感じで、お隣との席が近いタイプだったからよく聞こえちゃっただけで、盗み聞きしようってしたんじゃないですよ?』
『わかってるわかってる。俺もそういう居酒屋、結構行くし。』
『あ、そうなんですか?オススメあったら教えてください。』
『終わったらね。んで?続き、めちゃくちゃ気になるんだけど。』
『あ、すみません。それで、あの…さらにありがたいことに、僕のことも結構話してくださっていて。』
「ひ…え、…あ、いやでも、2人組だから、私たちとは限らな…。」
「限るから。この後の話で分かるから。最後までちゃんと見る!」
怜花の声の圧に負けて、里依はごくりと喉を鳴らした。
2週間後の20時30分過ぎに珍しく着信で、スマートフォンが震えた。電話の主は怜花だった。
「はーい、どうしたの?」
「今すぐカラチャンを見なさい!」
「へ?」
「んで30分あたりに戻して追いかけな!」
「なんで?」
「里依のこと、三澄さんが喋ってるから!」
「え…は、はぁー!?」
だらっとスマートフォンを握って、日用品で買うもののリストを作っているところだった。慌てて動画アプリを起動し、『カラチャン』と呼ばれる番組をタップした。このチャンネルではアプリや、コンテンツ全体の情報を知らせてくれたり、声優を交代で呼んでトークを繰り広げたりする。今日が三澄の出演回だということは知っていたが、里依はこのチャンネルを熱心に追いかけるほどではなかった。この番組の後にSNSで主な最新情報が共有されるため、そこで充分間に合うからだ。見ないでおいたのは、三澄が出るものを追いかけたら、また沼に片足を突っ込んでしまう気もしたからだった。
実際は生放送で行われているが、後から追いかけてみることもできる。怜花に言われた通りに、里依は30分頃まで飛ばした。怜花との通話はまだ切っていない。
『最近嬉しかったことっていうテーマだけど、誰からいく?』
『あ、じゃあ僕からいいですか?』
『ぜひぜひ!』
三澄はゲストで、MCは別の声優だった。今回はMC2人で三澄がゲストという3人での生配信らしい。
『この前、二階堂と居酒屋行ったんですよ。ライブの打ち上げを二人でやろうって話をしてて。』
『あー二人仲良いもんね。』
『同期なんでね。それであの、本当に偶然なんですけど、隣に座っていた二人組が≪スターカラット≫のファンで。』
『えっ、すご!そんなことあるんだ!なんでわかったの?』
『これが本当にびっくりなんですけど、先日のライブにいらっしゃってた方だったみたくて。』
『えー!』
「…待って、怜花。」
「いいから止めないでちゃんと見なさい。」
「先が怖い。」
「止めない!」
「はぁい…。」
『本当にありがたいことに、すごくライブを楽しんでくださったみたいで、ずっと2人で楽しそうにお話ししてらしたんですよね。あ、その居酒屋がこじんまりとした感じで、お隣との席が近いタイプだったからよく聞こえちゃっただけで、盗み聞きしようってしたんじゃないですよ?』
『わかってるわかってる。俺もそういう居酒屋、結構行くし。』
『あ、そうなんですか?オススメあったら教えてください。』
『終わったらね。んで?続き、めちゃくちゃ気になるんだけど。』
『あ、すみません。それで、あの…さらにありがたいことに、僕のことも結構話してくださっていて。』
「ひ…え、…あ、いやでも、2人組だから、私たちとは限らな…。」
「限るから。この後の話で分かるから。最後までちゃんと見る!」
怜花の声の圧に負けて、里依はごくりと喉を鳴らした。