ファンは恋をしないのです
里依は心配になって、動画のコメントを確認した。その居酒屋や三澄のことを話していた2人組を特定しようなどという不穏なものはなく、ただその偶然をいいな、羨ましいなといったコメントや、ライブの感想でほとんどのものは埋め尽くされていた。里依はホッとして、ふうと小さく息を吐いた。
「里依?」
「あ、いや。居酒屋とか私たちを特定しようとか、そういうこと言い始める人いないかなって探してただけ。動画のコメント欄も荒れてないし、ひとまずは安心かな…。」
「里依って本当に真面目だね…。」
「真面目っていうかさ、怖いじゃん。声優オタクだっているわけだし、それこそガチ恋勢みたいな人たちもゼロじゃないでしょう?三澄さんも優しくて穏やかそうな方だし、そういうファンがついててもおかしくはない。」
「まー…変なオタクは増えたけどさ。」
「ね。声優さんと私たちは同じ地球の日本に住んでても、基本的には交わらないんです、生活は。」
「そうそう。」
ここまで調べ終えて、里依は自分の発言が三澄に聞かれていたという事実の方に意識が向いた。大きすぎる羞恥心が襲ってきた。
「ってさぁーそんなことよりもあの発言の全部を三澄さんに聞かれてたんだ、私。」
「失礼なことは言ってなかったよ。ちょっと度を過ぎたオタク感はあったけど。」
「だよねぇー!失礼なことは言ってないはずなの!だけど…声の大きさはもっと何とかすべきだった…あと着眼点も…。」
「まぁでもさ、嬉しかったって言ってたじゃん、三澄さん。」
「…キモくなかったかな。」
「キモって思ってたら、あんなに嬉しそうに話さないと思うよ。」
「…そっかぁ。」
確かに、ちょっと照れたような雰囲気で、終始にこやかに話していた。嫌悪感があるような感じではなかったことを思い出し、怜花の言葉もあってこちらも少しホッとする。
「緊急事態だったでしょ?」
「…いや、本当に。というかさ、もしかして生活圏が三澄さんたちと被ってるってことなのかな?」
「まぁ、可能性はあるよ。」
「…もっと忍んで生きていくべき?」
「なんで里依が忍ぶのさ。」
至極真っ当な突っ込みが返ってきて、里依も『それもそうか』と納得する。おそらく、偶然はほとんど起こらないから偶然なのであって、また会うなんてことはないだろう。そう思って、その後少しだけ通話を続け、明日の仕事のために電話を切った。
「里依?」
「あ、いや。居酒屋とか私たちを特定しようとか、そういうこと言い始める人いないかなって探してただけ。動画のコメント欄も荒れてないし、ひとまずは安心かな…。」
「里依って本当に真面目だね…。」
「真面目っていうかさ、怖いじゃん。声優オタクだっているわけだし、それこそガチ恋勢みたいな人たちもゼロじゃないでしょう?三澄さんも優しくて穏やかそうな方だし、そういうファンがついててもおかしくはない。」
「まー…変なオタクは増えたけどさ。」
「ね。声優さんと私たちは同じ地球の日本に住んでても、基本的には交わらないんです、生活は。」
「そうそう。」
ここまで調べ終えて、里依は自分の発言が三澄に聞かれていたという事実の方に意識が向いた。大きすぎる羞恥心が襲ってきた。
「ってさぁーそんなことよりもあの発言の全部を三澄さんに聞かれてたんだ、私。」
「失礼なことは言ってなかったよ。ちょっと度を過ぎたオタク感はあったけど。」
「だよねぇー!失礼なことは言ってないはずなの!だけど…声の大きさはもっと何とかすべきだった…あと着眼点も…。」
「まぁでもさ、嬉しかったって言ってたじゃん、三澄さん。」
「…キモくなかったかな。」
「キモって思ってたら、あんなに嬉しそうに話さないと思うよ。」
「…そっかぁ。」
確かに、ちょっと照れたような雰囲気で、終始にこやかに話していた。嫌悪感があるような感じではなかったことを思い出し、怜花の言葉もあってこちらも少しホッとする。
「緊急事態だったでしょ?」
「…いや、本当に。というかさ、もしかして生活圏が三澄さんたちと被ってるってことなのかな?」
「まぁ、可能性はあるよ。」
「…もっと忍んで生きていくべき?」
「なんで里依が忍ぶのさ。」
至極真っ当な突っ込みが返ってきて、里依も『それもそうか』と納得する。おそらく、偶然はほとんど起こらないから偶然なのであって、また会うなんてことはないだろう。そう思って、その後少しだけ通話を続け、明日の仕事のために電話を切った。