浅黄色の恋物語

1. 秋風の夕日

 ぼくは富田真一。 鳴かず飛ばずなマッサージ師です。
生活保護を受けながら小さな会社でマッサージをしてます。 もうちっと仕事を欲しいんだけどなあ。
 出掛けるのは月曜日と土曜日。 他の日は家でゴロゴロ。
でも転がってるわけじゃなくてホームヘルパーを迎えたり買い物に行ったり、小説を書いたり、、、。
 そんなぼくもこの仕事を始めてから30年になります。 もうおじさんです。
最初は老人保健施設で働いてました。 あの頃が一番忙しかったかもね。
 一人15分を目処に一日30人はやってたから。
だってさ、デーサービスなんだもん。 人数勝負だよ。
 ところがその仕事が無くなってからというもの、訪問マッサージばかりやってきた。
この業界ではトレンド入りするくらいに人気?の仕事だからね。
でもその実態は、、、?

 さてさて函館市内を回りながら今日も仕事をします。 ほとんどはグループホーム。
50を過ぎるとね、おばあちゃんでも友達みたいに思えちゃうんですよ。 不思議なもんです。
 突っ込みを入れてくるおばあちゃんも居るし、ぼくが突っ込むおばあちゃんも居る。
顔を見せるとそれだけで喜んでくれるんだよね。 気を使ってるのかって思ったりもする。
 でもね、ぼくらの仕事は相手に気を使わせちゃいけないの。
そりゃそうだよ。 揉んでもらおうと思って頼んでるんだからさ。
でもみんな、独り者。 ご主人は早くに亡くしてる人が多いね。
聞かないけどさ分かるよ。 だって一人で部屋に居るんだもん。
 だからね、盛り上がる時は本当に盛り上がる。 ずっと話していたいって思う。
でも時間が決められてるからね、無理なんだ。
 実はぼくだって×1。 離婚してるんです。
10年近く前になるかなあ。 息子も居たのに。
 そんなこんなで一人になってあっちの町 こっちの町に引っ越してきました。
ぼくは酉年なんですよ。 だからかな、子供の頃から引っ越しばかりしてきたんだ。
10年と落ち着いた場所は無いね。 すぐに飛んでいく。
 特に30代以後は激しかったなあ。 団地に住んだり故郷を飛び出したりしてさ。
そんなこんなで今は函館の隣町、北斗市に住んでます。 またまた団地です。
 ここで自炊しながら遊んでまーす。 いいご身分ですわ。
なんてのは嘘。 ギリギリ族だよ。
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