浅黄色の恋物語
 「先生はこっちの人なの?」 「いや、ぼくね九州から流れてきたんだ。」
「え? 流れてきたの? そりゃまた大変ねえ。」 「最初は合わなくて大変だったよ。」
 そりゃそうだ。 5月くらいから30℃を越えそうに暑くなる九州から夏でも32℃がやっとの北海道へ来たんだから。
 その前は盛岡市に住んでいた。 ここはここで大変だった。
盆地だからね、夏は暑いし冬は寒い。
雪だって函館より多いし、、、。
 函館に来て(なんて雪が少ないんだ、、、?)って思ったくらいだから。
 それにさあ、最低気温は-10℃以下まで平気で下がるんだよね。
真冬なら昼でもそうだよ。 我慢比べしてたなあ。
 最初に借りたアパートは幽霊が住んでました。 仕事に失敗して自殺したおじさんと誰かに殺されたっていう男の子、それに失恋して自殺した女の子だった。
その女の子はぼくに興味を持っていたらしく、「引っ越したら付いていきたい。」って友達に話したそうです。
 友達にも幽霊が見える女の子が居ましてね。
 そう、24,5歳くらいの女の子だったらしい。
そこを出てから住んだのは市営のアパートでした。
ここにもどうやら幽霊さんが住んでいたようですが、、、。
 この市営アパート街には生協とかブティックとか床屋とか在りましたねえ。
 驚いたのはアパートの中にも床屋やスナック、銭湯に道場まで営業してたことですね。
 床屋さんとお風呂屋のおばちゃんにはお世話になりました。
いろんなことを思い出しますねえ。
 その後は下宿暮らし。 でも床屋はアパート内の床屋さんだった。
 そうそう、幽霊が住んでたアパートを出る前の日、油断して水道を凍らせちゃってさあ、、、。
朝から大変だった。 大家さんにも怒られたしねえ。

 このおばあちゃん、右膝は人工関節を入れてます。 歩きにくそう。
見るからに一人で居たそうなおばあちゃんなんですけど、、、。
 でもね、ぼくも55歳だからかおばあちゃんには見えないんです。
今の高齢者は若いからねえ。 昔と違って。

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