浅黄色の恋物語
 自宅で元気に過ごしているおばあちゃんたちを見て、施設でみんなと一緒に暮らしているおばあちゃんたちを見てぼくはそう思ったんだ。
「好きならセックスを、、、」 それだって分からないわけじゃない。 でもね、それが全てじゃないんだよ。
そう思うのはアダルトサイトの見過ぎかもねえ。

 さてさて今夜も一人寝の夜です。 前妻と居た頃は毎晩のようにくっ付いて寝てたのにねえ。
でもさ、それはそれだしこれはこれだと思う。 過去にしがみ付いたって何も戻ってこないんだ。
『昨日から今日へ。 今日から明日へ。』だよ。 なんてかっこ良く書いてみる。
 確かにぼくは振り返って失敗してきたんだ。 振り返るのは止そうね。
明日は日曜日。 何が起きるのかなあ?

 昔、夕焼けはもっともっと鮮やかだった。 虹だってきれいだった。
夕立の臭いももっともっとリアルで水臭かった。
 家の玄関にはなぜか黒電話が下駄箱の上に置いてあった。
そして必ずと言っていいくらいにレースのカバーが掛けられていた。
 昭和の時代って不便だったんだよね。 でも不便だとは思わなかった。
それなりに楽しい時代だった。
もし今の若い子が昭和の時代に行ったら生きられなかったかもねえ。
 そんな時代を乗り越えてきたおばあちゃんたちと話してると考えさせられることは多いよ。
今はさ、腹が減ればコンビニで何でも買える。
喉が渇けば水も飲みたい放題。
わざわざ井戸から汲み上げる必要すら無いんだ。
 夜中だってパソコンやスマホを使えば欲しい物を注文できる。
昭和の時代は店にまで行かないと買えなかったよね。
便利過ぎる時代もどうかと思うよ。
だって1000円札でさえ有り難く思わないじゃない。
 ぼくもいろいろと買い物をするからそう思うよ。
稼ぐのは大変なのに使うのは楽なんだもんねえ。
 便利になればなるほど人の交流が薄っぺらくなってくる。
心から交流しようとは思わなくなる。 それでいいのかな?
 おばあちゃんたちを見ているとそんなことまで考えさせられるよ。
 「寝たきりだからどうでもいいんだ。」とか「痴呆だから施設に放り込んでおけばいい。」とか聞いたことも有る。
家族でさえそんな人が居るんだから笑えないよね。

 ずっと前、老人保健施設で働いていた頃、こんな人が居た。
 マッサージをしてるとね、いかにも寂しそうな顔をするおばあちゃんだった。
そこで考えた。 なんとかして笑わせようと。
 それでぼくは仕事をしながら擽ってみたり漫才をやってみたりした。
そうするとさ、おばあちゃんが言ったんだ。 「ここに来ている間だけでもいいから笑わせてください。」って。
 それで「何でそんなことを言うんだ?」って聞いてみた。 答えは衝撃的だった。
 「家に帰ったら息子と孫に「早くくたばれ。 糞ばばあ!」って怒鳴られるんだよ。」って。
 今だったらケアマネージャーとか高齢福祉課とか使える物を使って対処してもらうんだけど、30年前の話だ。
ぼくもまだ20代で世の中のことを知らなかったから何も出来なかった。
おばあちゃんを守ってやれなかった。 悔し過ぎるよ。
 そんなことが有ったもんだからおばあちゃんたちの話はなるべく聞くようにしている。
今はいろいろと知ってるからアドバイスも出来るしね。
辛かったなあ。
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