『夢列車』   ~過去行き、未来行き~
 シャワーを浴びたあと、帰宅する前にコンビニで買ったカップラーメンとおにぎり2個で夕食を済ませた。
 但し、カップラーメンの汁はすすらず、水もほとんど飲まなかった。
 現場での生理現象を最小限にしなければならないからだ。
 それだけでなく、大も小も絞り出した。
 排泄物貯蔵臓器をエンプティ―の状態にすることを日課にしているからだ。
 
 時刻を確認すると、少し余裕があるのでテレビをつけた。
 相変わらず新型コロナのニュースばかりだ。
 と思ったら、安倍首相の姿がテレビに映し出された。
 
 なになに? 
 慶応大学病院を受診? 
 えっ? 
 体調が悪いの? 
 もしかして持病の悪化? 
 そうなると……、
 
 9月17日のニュースが鮮やかに蘇ってきた。
 菅内閣発足。
 夢という形の中の戯言(たわごと)と笑い飛ばしていたが、あれは本当に起きることなのかもしれない。
 
 とすると、そのことを知っているのはわたしだけ? 
 世界中でわたしだけ? 
 
 口の中に溜まった唾を飲み込むと、ゴクリと大きな音がして、不敵な言葉が思い浮かんだ。
 
〈未来を知る男〉

 その瞬間、自分には特別な何かが備わっているのかもしれないという都合の良い思いが湧き出してきた。
 
 ということは……、
 
 未来を知ることによって何がもたらされるのかを考えた。
 すると、あることが思い浮かんだ。
 それは信じられないようなバラ色の未来を約束するものだった。
 わたしは天にも昇る心地になり、鼻唄交じりでスキップを踏みながら仕事場に向かった。
 
 
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