『夢列車の旅人』 ~4人の想いを乗せて過去へ、未来へ~
 目覚ましの音で叩き起こされた。
〈さっき眠ったばかりなのに〉と置時計を見ると、11時丁度を示していた。
 4時間爆睡していた。
 しかし、頭が重かった。
 焼酎が残っているのか、どんよりと重かった。
 量が少し多かったようだ。
 後悔したが今更どうしようもないので、重い体に鞭打ってなんとか起き上がった。
 
 歯を磨いて顔を洗っているうちに頭の重さが少し取れてきた。
 しかし、焼きそばがもたれているのか、食欲はまったく感じなかった。
 熱いコーヒーをたっぷり飲んで朝食の代わりとした。
 
 12時丁度に電話をかけたが、彼女と話すことはできなかった。
 保管庫で作業中だというのだ。
 まだしばらくかかるらしい。
 今度も連絡先と用件を訊かれたので、ちょっと躊躇ったが、名前と電話番号を伝えた。
 用件は「お兄さんからの伝言」とだけ伝えた。
 そして、できれば夜7時までに電話が欲しいことも伝えた。
 
 それからの時間が長かった。
 1分がこれほど長いとは思わなかった。
 待つ身の辛さではないが、じりじりとして腰が落ち着かなかった。
 すると、何故か若い頃のことを思い出した。
 来るはずもない女を何時間も駅前で待ち続けた嫌な思い出だった。
 昔から女に縁がない人間なのだ。
 すっぱいものが胃から逆流してきた。
 
 
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