『夢列車』   ~過去行き、未来行き~
 7時になっても電話は鳴らなかった。
 カップラーメンだけの夕食を終えても電話は鳴らなかった。
 シャワーを浴びたあと、すぐにスマホを確認したが、着信履歴は残っていなかった。
 8時になっても、スマホは無言を貫いていた。
 
 仕事中もスマホは鳴らなかった。
 最初の休憩の時にも確認したが音沙汰なしだった。
 無言のスマホと睨めっこしていると、なんか腹が立ってきた。
 連絡先と用件を伝えたのに音沙汰なしとはどういうことだ、
 余りにも失礼じゃないか、
 こっちの親切を無にするとはどういう了見をしているのだ、
 期待が大きかっただけに反動も大きかった。
 夢の中で見た美しい女が醜女(しこめ)に変わった。
 日付が変わってからは確認することを止めた。
  
 仕事が終わってもムカムカしていた。
 よく行くラーメン屋で餃子ダブルとニラレバ炒めを肴に生ビールを3杯飲んだ。
 それでも足りないので、部屋に戻って鯖缶をツマミに焼酎のロックを4杯飲んだ。
 流石に酔いが回ってきたので、歯も磨かずに布団に倒れ込んだ。
 
 
 
< 142 / 183 >

この作品をシェア

pagetop