『夢の旅人』  ~過去へ、未来へ~
 彼女が少し落ち着くのを待って、言葉を継いだ。
「高松さんから『今まで貯めてきたお金や身の回りの物を妹に渡したい』と頼まれて、通帳やカード、印鑑をしまってある場所を伺っています。それから、『部屋の中には自分が描いた絵がいっぱい置いてあるから、それも妹に見てもらいたい』とも言っていました」
 しかし、声は返ってこなかった。
 奇妙な話の整理が付いていないようだった。
 間が持たなくなったわたしは、冷めたエスプレッソを口に含んだ。
 それを見た彼女も抹茶ティーラテに手を伸ばしてゴクンと飲んだが、キメが粗くなったミルクの泡が唇に付いた。
 それに気づいたのだろう、膝の上に置いていたハンカチで軽く拭ったが、口紅が少し取れたのか、チラッとハンカチに目をやった。
 しかしすぐに、くすっと笑って、視線をわたしに向けた。
 今までとは表情が変わっていた。
 
 
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