『夢列車の旅人』 ~想いを乗せて列車は走る。過去へ、未来へ~
 息が落ち着いてから、恐る恐る右手で喉に手を当てた。
 傷はなさそうだった。
 痛みもなかった。
 血も出ていなかった。
 ただ、ザラザラとした恐怖だけが纏わりついていた。
 
 重い体をなんとか起こして、タオルで汗を拭き取った。
 新しい下着とパジャマに着替えると少し落ち着いてきたので、冷蔵庫からミネラルウォーターを取ってゴクンゴクンと飲んだ。
 冷たい水が胃まで落ちると、心拍数が正常なレベルに戻ってきた。
 フ~、
 大きな息と共に悪夢を体の外に吐き出した。
 その時、突然スマホがテーブルの上で動いた。
 ディスプレーに異様な何かが写っていた。
 あの老人の不気味な笑い顔だった。
 まさか、と頭を振って見直すと、そこに老人の顔はなかった。
 彼女からだった。
 徳島絵美。
 
 
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