『夢列車の旅人』 ~想いを乗せて列車は走る。過去へ、未来へ~
10月12日
∞ 10月12日 ∞
彼女の乗るひかり511号は定刻通り13時27分に浜松駅に着いた。
今回は先頭を切ってエスカレーターを降りてきた。
化粧直しは新幹線の中で済ませてきたのだろう。
わたしが右手を胸の前に上げて小さく手を振ると、満面の笑みが返ってきた。
改札を抜けた彼女の服装は前回とがらりと変わっていた。
黒っぽいジーンズにくすんだようなライトグリーンの長袖を合わせていた。
靴はペッタンコのローファーだった。
女性の場合はパンプスというのだろうか?
前回のピンヒールとは様変わりだった。
「お待たせしました」
「お疲れさまでした」
改めて彼女のシャツとジーンズに目をやった。
「服がまったく違いますね」
ひょんな顔をしていたせいだろうか、彼女がくすっと笑った。
「荷物の片づけがあるかもしれないから汚れてもいい服にしたんですよ」
「なるほど」
わたしを少し見上げる視線に頷きで返した。前回は目の高さがほぼ一緒だったが、今回はわたしの鼻の頭くらいになっていた。
「行きましょうか」
女性らしい服装を期待していたわたしは少しがっかりしたが、それでもおくび(・・・)にも出さないように話題を変えて彼女を促した。
番号のことも敢えて訊かなかった。
現場に着けばすべてわかるからだ。
南口のタクシー乗り場は先週同様あくびの連鎖が続いていた。
コロナ不況で大変なのだろうなと思いながら中型タクシーに乗り込んだ。
彼女の乗るひかり511号は定刻通り13時27分に浜松駅に着いた。
今回は先頭を切ってエスカレーターを降りてきた。
化粧直しは新幹線の中で済ませてきたのだろう。
わたしが右手を胸の前に上げて小さく手を振ると、満面の笑みが返ってきた。
改札を抜けた彼女の服装は前回とがらりと変わっていた。
黒っぽいジーンズにくすんだようなライトグリーンの長袖を合わせていた。
靴はペッタンコのローファーだった。
女性の場合はパンプスというのだろうか?
前回のピンヒールとは様変わりだった。
「お待たせしました」
「お疲れさまでした」
改めて彼女のシャツとジーンズに目をやった。
「服がまったく違いますね」
ひょんな顔をしていたせいだろうか、彼女がくすっと笑った。
「荷物の片づけがあるかもしれないから汚れてもいい服にしたんですよ」
「なるほど」
わたしを少し見上げる視線に頷きで返した。前回は目の高さがほぼ一緒だったが、今回はわたしの鼻の頭くらいになっていた。
「行きましょうか」
女性らしい服装を期待していたわたしは少しがっかりしたが、それでもおくび(・・・)にも出さないように話題を変えて彼女を促した。
番号のことも敢えて訊かなかった。
現場に着けばすべてわかるからだ。
南口のタクシー乗り場は先週同様あくびの連鎖が続いていた。
コロナ不況で大変なのだろうなと思いながら中型タクシーに乗り込んだ。