『夢列車の旅人』 ~想いを乗せて列車は走る。過去へ、未来へ~
 しかし、びくともしなかった。
 それでも諦めずにもう一度思い切り引っ張った。
 でも、同じだった。
 ダイヤル錠は頑固な拒否の姿勢を貫いていた。
 ガッカリしてツマミから手を離した瞬間、2階から音がした。
 ドアが開く音だった。
 ヤバイ。
 あの老人に違いない。
 わたしは彼女の腕を取って小走りに道路へ出て右折し、後ろを振り返らず足を速めた。
 
 電柱を通り越してその陰に隠れて様子を窺うと、姿が見えた。
 やはりあの老人だった。
 しかし、こちらに近づいてくることはなかった。
 先週見たのと同じエコバッグを右手で揺らしながら遠ざかっていった。
 多分あのコンビニに買い物に行くのだろう。
 よかった……、
 安堵の息が口から漏れた。
 それでも、わたしたちには頭を冷やすための時間が必要だった。
 しかし、周りには店らしきものは何も無かった。
 落ち着ける店を探して歩き始めた。
 
 
 
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