『夢列車の旅人』 ~4人の想いを乗せて過去へ、未来へ~
「ごめんなさい」
うな垂れていた。
いや、萎れているように見えた。
「間違いなくあの数字だと思ったのですけど……」
わたしは彼女がダイヤル錠のツマミを回して、止めた数字を思い出していた。
〈4〉と〈6〉
「あの数字は?」
彼女が小さく頷いた。
「兄の大ファンの画家の誕生日なんです」
それはラファエッロの誕生日だった。
4月6日。
「あの日、家に帰って遅くまで兄のことを考えながらラファエッロの画集を見ていたら、突然閃いたんです。彼の誕生日に絶対間違いないと。それで居ても立ってもいられなくなって、今仁さんに電話をしたんです」
「なるほど……」
わたしは16世紀のフィレンツェでラファエッロの工房に弟子入りできたかもしれない高松さんのことを思い浮かべた。
彼の顔は念願叶った喜びで満ち溢れているようだった。
それは、両親の想いも一緒に叶えることができた喜びなのだろうと思った。
それほどラファエッロを愛している高松さんなら、その誕生日を開錠番号にするのは当然ではないだろうか。
とすれば、〈4〉と〈6〉以外にはあり得ないのではないだろうか。
そういう思いがどんどん強くなっていったが、しかし、現実は違っていた。
開錠はできなかったのだ。
う~ん、
目を瞑って頭の中で唸っていると、彼女の頼りなげな声が聞こえた。
うな垂れていた。
いや、萎れているように見えた。
「間違いなくあの数字だと思ったのですけど……」
わたしは彼女がダイヤル錠のツマミを回して、止めた数字を思い出していた。
〈4〉と〈6〉
「あの数字は?」
彼女が小さく頷いた。
「兄の大ファンの画家の誕生日なんです」
それはラファエッロの誕生日だった。
4月6日。
「あの日、家に帰って遅くまで兄のことを考えながらラファエッロの画集を見ていたら、突然閃いたんです。彼の誕生日に絶対間違いないと。それで居ても立ってもいられなくなって、今仁さんに電話をしたんです」
「なるほど……」
わたしは16世紀のフィレンツェでラファエッロの工房に弟子入りできたかもしれない高松さんのことを思い浮かべた。
彼の顔は念願叶った喜びで満ち溢れているようだった。
それは、両親の想いも一緒に叶えることができた喜びなのだろうと思った。
それほどラファエッロを愛している高松さんなら、その誕生日を開錠番号にするのは当然ではないだろうか。
とすれば、〈4〉と〈6〉以外にはあり得ないのではないだろうか。
そういう思いがどんどん強くなっていったが、しかし、現実は違っていた。
開錠はできなかったのだ。
う~ん、
目を瞑って頭の中で唸っていると、彼女の頼りなげな声が聞こえた。