『夢列車』   ~過去行き、未来行き~
 仕事帰りに高松さんから食事に誘われた。
 滅多にないことだ。
 人付き合いの良くない高松さんが誘ってくるなんて、なんか魂胆(こんたん)があるのだろうか? 
 少し身構えながら彼に付いていった。
 
 24時間営業の海鮮居酒屋に入ると、「うまいものを食べさせてやるから」と言って、次々に注文を店員に告げた。
「ここはよく来られるのですか?」
「そうでもないけどね」
 たまにいいことがあった時に来るのだという。
 今日はどんないいことがあったのだろうか? 
 もしかして松山さんがいないということがいいことなんだろうか? 
 と想像していたら、生ビールが運ばれてきた。
 高松さんはすぐさまゴクゴクとうまそうに飲んだ。
 
「あっ、お疲れさん」
 思い出したかのように、半分ほどに減ったジョッキをわたしのに当てた。
「お疲れさまでした」
 わたしは追いつくようにゴクゴクっと音を立てて飲んだ。

「プハー。やっぱりうまいですね、仕事のあとのビールは」
 水分を控えていたカラカラの体にビールが染み渡った。
 正に五臓六腑に染み渡るとはこのことだ。
「まあ、このために生きているようなもんだからね」
 彼は残りの半分を一気に飲み干して、お代わりを頼んだ。
 わたしも負けじと飲み干して、お代わりを頼んだ。
 
 
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