『夢列車の旅人』 ~4人の想いを乗せて過去へ、未来へ~
 連結の自動ドアが閉まった瞬間、またも(・・・)わたしの魂が移動し、〈未来行き列車〉に戻っていた。
 まだ『2080年駅』に停車したままだった。
 車内は冷凍庫の中のように凍りついており、人間が生存できる環境は失われていた。
 そんな状態の中で、徳島絵美とわたしは抜け殻のままシートに座っていた。
 彼女の魂はどこにも見当たらなかった。
 
 しばらくして、ドア上のディスプレーに『2080年7月7日午後』という表示が表れ、時を刻み始めた。
 13:00 13:01 13:02 ………………、18:18。
 そこで時が止まった。
 すると、元徳島絵美の目に光が灯った。
 呼応するようにシートの前の壁がディスプレーに変化し、生まれたばかりの赤ちゃんの映像を映し出した。
 その瞬間、元徳島絵美の体が赤ちゃんに変わった。
 可愛い女の子だった。
 徳島絵美は生まれ変わったのだ。
 すると、ディスプレーに名前が表示された。
(あま)(てらす)()()
 と同時に車内が一気に明るくなって暖かくなると共に時が動き始めた。
 18:19 18:20 18:21…………、
 そんな中、天照美輝の目は隣に座る抜け殻のわたしを見つめていた。
 身動き一つしないわたしをじっと見つめていた。
 
 時は進んでいた。
 19:00 19:01 19:02 ………………、20:18 20:19 20:20。
 また時が止まると、シートの前のディスプレーに生まれたばかりの男の赤ちゃんが映し出された。
 その瞬間、浮遊する魂がわたしの体に戻った。
 しかし、元徳島絵美のように赤ちゃんには変化しなかった。
 その時、連結ドアが開いて、美しい容姿をした車掌が入ってきた。
『クレオニ』だった。
 クレオパトラによく似ていることから〈クレオ似〉をもじって名づけられた万能ロボットだ。
 
 
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