『夢列車』   ~過去行き、未来行き~
 二人の皿が空になるのを見計らったように次の料理が運ばれてきた。
 今度も刺身の三種盛だった。
 大トロ、中トロ、赤身。
 わたしが躊躇わずに大トロに箸を伸ばすと、高松さんは赤身から食べ始めた。
 あっさりしたものから脂っぽいものへ食べ進めるのが高松さん流なのだという。
 なるほど、それも一理ある、
 わたしは大トロを皿に戻して赤身を頬張った。
 
 美味い! 
 赤身なのに濃厚。
 水っぽさがまったくない。
 まったりとした赤身に舌鼓を打った。
 そして、中トロ、大トロと食べ進んで、とろけるような甘い脂を堪能した。
 
 ジョッキに手を伸ばすと、高松さんの手がわたしの手を押さえた。
 せっかくの甘い脂の感触をすぐに洗い流すのはもったいないと言うのだ。
 確かに、言われてみればその通り。
 恐れ入谷の鬼子母神。
 ジョッキから手を離して、しばし口の中の余韻に浸った。
 
 
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