『夢列車』   ~過去行き、未来行き~
 それが薄らいできた頃、特大のご馳走が運ばれてきた。
 大皿の上に人の頭の二倍ほどある魚の頭が登場したのだ。
 マグロの兜焼き。
 業務用オーブンでじっくりと焼き上げたものだという。
 何処から食べようかと迷っていると、高松さんは躊躇わず目玉をくり抜いて口に入れた。
 目の周りのトロトロのゼラチン質と脂がたまらなく好きらしい。
 わたしも真似をして目玉をしゃぶった。
 う~ん、美味。
 思わず右手の親指を立ててクリクリっという感じで目を動かした。
 しかし、彼の視線は兜焼きに集中していた。
 頭肉や頬肉を剥ぎ取るのに忙しそうだった。
 わたしも負けじと剥ぎ取っては口に入れた。
 う~ん、絶品。
 唸るしかないほどの美味しさに、ビールを飲むのを忘れてパクついた。
 
「あ~、食べた食べた」
 マグロ尽くしに満足した高松さんがお腹を擦った。
「ごちそうさまでした」
 わたしは両手を合わせて、ほぼ骨だけになったマグロの頭に謝意を示した。
「あとはチビチビやるか」
 店員に向かって手を上げた高松さんは、芋焼酎のお湯割りを頼んだ。
 わたしは麦焼酎のお湯割りにした。
 
 
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