『夢列車の旅人』 ~想いを乗せて列車は走る。過去へ、未来へ~
 ところで今日は何日だ? 

 ……8月17日か。
 新型コロナがなかったら東京オリンピックが終わってホッとしている頃かもしれないな。
 ホッとしているというよりも気が抜けていると言った方が合っているかもしれない。
 わたしはまったく興味がないけど、仕事仲間はサッカーが見たかったようだ。
 決勝戦でブラジルを破って日本が優勝する姿を見ることができたら、人生が変わるかもしれないのにと残念がっていた。
 気持ちはわからないでもないが、こればっかりはどうしようもない。
 物事は思うようにならないと相場が決まっている。
 
 突然、壁に掛けていた仕事着が落ちた。
 扇風機の風量が強すぎたようだ。
 弱にして壁に掛け直した。
 今日もこれを着て交通誘導警備の仕事に行かなければならない。
 今やっている工事の内容は老朽化した下水道管の取替えで、時間は夜9時から朝6時まで。
 現場は極めて交通量の多い道路なので、渋滞発生を防ぐために夜間に工事をしている。
 工事を始めてからかなり経つが、なかなか終わらない。
 それに、ここが終わったとしても、この種の工事は永遠に無くならないらしい。
 下水管は日本全国に46万キロメートルの管が埋まっていて、これは地球を11周するほどの長さになるらしいが、その耐用年数は約30年で、毎年膨大な交換需要が発生する。
 それを放っておくと、管が腐食したり、ヒビが入って水漏れを起こす。
 場合によっては破裂することもある。
 そうなれば大変なことになる。
 道路が水浸しになったり、陥没することもあるのだ。
 実際に全国では何千件もの陥没事故が起こっている。
 だから至る所で工事が行われている。
 わたしの仕事もなくなる心配はないということになる。
 
 
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