『夢列車』 ~過去行き、未来行き~
顔を上げた松山さんがフッと笑ってわたしの背中に右手を置き、軽く押した。
ドアの前に立つと、スーッと開いたので外へ出た。
そして、駅の改札口へ向かった。
松山さんが改札口の前に立った。
その途端、ディスプレーに〈情報漏洩〉という文字が表示された。
改札は閉まったままだった。
入れ替わってわたしが改札口に立った。
すると、来た時と同じように顔認証と指紋認証と遺伝子認証をされたあと、〈本人確認終了〉の文字がディスプレーに表示されて、改札ドアが自動で開いた。
なんの問題もなくプラットホームに入ることができたのでホッとして振り返ると、「25日になったら現実の世界に戻れるかもしれないから、24日まで休むと現場監督に伝えてくれ。そうだな、宇和島の親戚が急病になったとでも言っといてくれ。頼んだぞ」と松山さんが両手を合わせた。
わたしは頷いて、「必ず帰って来て下さい」と告げて、列車の方へ歩き出した。
列車のドアの前で立ち止まって振り返った。
しかし、松山さんの姿はなかった。
カフェに戻って、あのぐちゃぐちゃになった新聞を丁寧に伸ばして読み直すんだろうか?
でも、それ以上は想像しないことにした。
自分が帰ることだけに意識を集中させた。
車内に入って席に座ってディスプレーを見上げると、『8月20日駅行き』と表示されていた。
思わず安堵の息が漏れた。
目を瞑って列車が動き出すのを待った。
ドアの前に立つと、スーッと開いたので外へ出た。
そして、駅の改札口へ向かった。
松山さんが改札口の前に立った。
その途端、ディスプレーに〈情報漏洩〉という文字が表示された。
改札は閉まったままだった。
入れ替わってわたしが改札口に立った。
すると、来た時と同じように顔認証と指紋認証と遺伝子認証をされたあと、〈本人確認終了〉の文字がディスプレーに表示されて、改札ドアが自動で開いた。
なんの問題もなくプラットホームに入ることができたのでホッとして振り返ると、「25日になったら現実の世界に戻れるかもしれないから、24日まで休むと現場監督に伝えてくれ。そうだな、宇和島の親戚が急病になったとでも言っといてくれ。頼んだぞ」と松山さんが両手を合わせた。
わたしは頷いて、「必ず帰って来て下さい」と告げて、列車の方へ歩き出した。
列車のドアの前で立ち止まって振り返った。
しかし、松山さんの姿はなかった。
カフェに戻って、あのぐちゃぐちゃになった新聞を丁寧に伸ばして読み直すんだろうか?
でも、それ以上は想像しないことにした。
自分が帰ることだけに意識を集中させた。
車内に入って席に座ってディスプレーを見上げると、『8月20日駅行き』と表示されていた。
思わず安堵の息が漏れた。
目を瞑って列車が動き出すのを待った。