『夢列車の旅人』 ~想いを乗せて列車は走る。過去へ、未来へ~
 工事開始1時間前に現場に着いたが、まだ早いせいもあって、現場監督も松山さんも来ていなかった。
 ほっと胸を撫でおろしたが、視線を周囲から逸らすことはなかった。
 
 30分前になった。
 現場監督が到着した。
 工事関係者も続々集まって来た。
 しかし、松山さんの姿はなかった。
 
 10分前になった。
 ミーティングが始まる時間だ。
 現場監督の前に工事関係者が集まった。
 それでも、松山さんが来る気配はなかった。
 戻れなかったのだろうか? 
 あのまま未来に閉じ込められているのだろうか? 
 もう二度と戻って来られないのだろうか? 
 一気に不安が押し寄せてきた。
 その時だった、
 視線の先に走って近づいてくる男の姿が見えた。
 目を凝らすと、顔がはっきりと見えた。
 彼だった。
 間違いなく松山さんだった。
 息を切らしてミーティングの輪に入ってきて、わたしをチラッと見た。
 そして、右目を瞑って右手をその前に立てて、さっと下ろした。
 
 
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