『夢列車』　　　～過去行き、未来行き～
　あの列車に乗っていた。
　未来行き。
　ドア上のディスプレーを見上げると、次に停まる駅名が表示されていた。
　奇妙な駅名だった。
『9月17日駅』

　しばらく走ると、音も立てずに静かに止まった。
　すると、ディスプレーの表示が変わった。
『9月17日駅：終点：降車』

　未来行きの列車の終点がここ？　
　9月17日で終わり？　
　と思うと、心臓がドキドキしてきた。
　
　もしかして、これより先には行けないのだろうか？　
　まさか、わたしの人生の終着駅がここなのだろうか？
　
　不安を通り越して恐怖が滲んでくると、体が一気に重くなった。
　鉛の鎧を無理矢理着せられているような感じになった。
　
　こんなところでは降りたくない、いや、降りるべきではない、と思った時、突然ブザーが鳴って、ディスプレーに映る降車の文字が大きくなった。
〈早く降りろ〉という催促のようだった。
　それでも動かないでいると、いきなり背もたれが前に倒れてきて、前屈みの姿勢を強いられる格好になった。
　踏ん張ったが、背もたれの勢いは止まらず、前に押しつぶされそうになった。
　これ以上シートに座っていることはできなくなった。
　体を左横にスライドさせて通路に出ると、いきなり背もたれが前に倒れてシートに折り重なり、蒸発するように消えた。
　わたしは呆気に取られて、消えたシートの残像を見続けた。
　しかし、視線の先には〈無〉しかなかった。
　
　またブザーが鳴った。
　ハッとしてディスプレーを見ると、降車の文字が更に大きくなっていた。
　ここで降りるしかなさそうだった。
　
　
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