『夢列車の旅人』 ~4人の想いを乗せて過去へ、未来へ~
「松山さんは過去に行きたいと思ったことがありますか?」
 すると、すぐに〈ん?〉というような表情になったが、それもすぐに消えて眉が寄った。妄想を中断されたせいかもしれなかった。
「いや、もしかして松山さんにも行きたい過去があるのかなって思って」
 慌てて弁解がましく付け足したが、松山さんはわたしに視線を向けず、ジョッキに手を伸ばしてググっと呷るように飲んだ。
 そして、ジョッキをドンとテーブルに置いて、視線をわたしに向けた。
「ある。行きたい過去がある」
 いやらしい表情は完全に消えて、今まで見たことがないような輝きを瞳に湛えていた。
「あの伝説のライヴが見たい!」
 彼の口から出てきたその名は史上最強のハードロックバンドだった。
『レッド・ツェッペリン』


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