千代子と司 ~スパダリヤクザは幼馴染みの甘い優しさに恋い焦がれる~
千代子が、エプロンをしている。
清潔感がある淡い水色の、少し細身なワンピース風の丈があるエプロン。
先日のフレアスカートもよく似合っていた千代子は少し少女趣味があるのかもしれないがあくまで控え目で、落ち着いた装い。
「司さん?」
「あ、いや、ごめん。今、行くね」
「もしかしてそうやって一冊一冊ちょっとずつ読んでるから終わらないのでは」
疑っている千代子の視線に苦笑をする司はまさか千代子本人の事をあれこれ考えていて手が度々止まっていたなど到底言える筈も無く。疑いの目をしつつも「飲み物は冷蔵庫の中にあったアイスコーヒーで良いですか?」と問う千代子にそれもまた司はお願いをする。
リビングに向かえばこの日の為に用意した二人掛けのテーブルに彩りの良いランチプレートのセットが二つ、並んでいた。
「ちよちゃん、やっぱり才能があるね」
「え、あ……そんな、簡単な物の寄せ集めと言うか」
「そんな事ないよ、凄いな」
すぐに手を洗って戻ってきた司にはにかむように笑う千代子は見込んだ通りに手際が良かった。
ちら、とキッチンカウンターの方を見ても使った道具類はもう片付いて、少し乾かしているのかあとは棚にしまうだけになっている。
席につく司に差し出されるアイスコーヒー。
ちよちゃんももう座って、と促して二人だけのランチが始まる。
「これってアレだよね、海外の定番のモーニングとかランチの」
「はい。あの、このパンケーキなんですけど……お砂糖は入っていないので普通のパンみたいに食べられるので」
千代子が作ったのはパンケーキの上に目玉焼きや焼いたベーコン、ズッキーニの輪切り、レタスなどを乗せたオープンスタイルの食事系パンケーキプレート。
付け合わせにコールスローサラダ、スープは具だくさんのポトフ。
よくよく見てみればほぼ全てにおいて、具材がそれぞれに流用されている。パンケーキに乗っている焼かれたズッキーニは輪切りで、ポトフの中に入っている方は切り方を賽の目状に変えている。コールスローに入っている野菜もポトフの中に入っており、パンケーキの上に乗っているベーコンもまた、ポトフの中にある。
全てを余すことなく、よく考えて作られている。