千代子と司 ~スパダリヤクザは幼馴染みの甘い優しさに恋い焦がれる~
「変な物、ってまさか」
「パンケーキ、人によっては見た目で敬遠されてしまうので……日本だとホットケーキとかの甘い印象が強いから」
切り分けて口に運ぶ司に向けられる心配そうな視線。味は大丈夫ですか?と聞く千代子のその表情に司は「美味しいよ」と若干食い気味に感想を述べた。
そんなの当たり前だ。
本当はそばにいて欲しいと思っている女性が作った手料理。いつも画像だけを見せられ、お預けをくらっていたが今日は出来立てが食べられるなど……司にとっては夢のような状況だった。
「あとその、司さん体が大きいからどれくらい食べるのか分からなくて」
足りなかったらごめんなさい、と謝る千代子だったがちゃんと成人男性が摂取する量。下手に大きく盛ったりはしていなかったけれどよく見ると千代子のパンケーキは二枚で司の方は三枚になっていた。
「このパンケーキの粉は司さんと会った日に行っていたスーパーに売ってて、スーパーのオリジナル商品なんです。あの日は甘みの入っているホットケーキミックスを買いに行っていたんですが美味しかったのでまた行ってみたら甘くないパンケーキ用のも売っていたので……ってごめんなさい、変な事喋っちゃって」
きっとそれが千代子の最近の趣味なんだろうな、と司は優しく笑いかけて「ちよちゃんが元気そうで本当によかった」と言う。涙をこぼして、それを必死に止めようとして肩を震わせていた彼女が自分に向けて一生懸命に説明している姿は何とも言えない気分にさせてくれる。
愛する、と言う感情を当てはめても足りない。
切なくなるほどの愛おしさが心の奥深くから込み上げてくるようだった。
「それでね……ちよちゃんに一つ、提案があるんだ」