千代子と司 ~スパダリヤクザは幼馴染みの甘い優しさに恋い焦がれる~
部屋で片づけの続きをしていますから、と言っていた千代子。ドアストッパーを掛け、入り口を開けっ放しにしている。
司は「ちよちゃん」と呼びかけ、少し飲まない?と誘う。もちろん、千代子が酔ってしまわない程度。それ以上は飲ませない。
誘ったのは自分だったので司がキッチンに立って用意をしていると当たり前だが、ソファーに座って待っている千代子がいる。風呂上りの晩酌はいつも一人だったのに。
座りながらも少し屈み、ローテーブルの上にあったダイレクトメールを整理している千代子に「一杯だけ」と小さい方のグラスを渡した司も隣に腰を下ろす。
他愛のない話をしていた。
千代子がどういった暮らしをしていたか、最近ハマっていると言うホットケーキミックス探しの話だとか。寝間着も兼ねているらしいコットンのロングワンピース、少し長めな丈と履いているレギンスから覗く素の足首。アルコールが回って来たのか姿勢を崩す事を遠慮していた千代子がソファーの背もたれに深く体を預けるようになった頃、その手からグラスを落としてしまわないように司は取り上げる。
大人同士だから、とアルコールの混じった吐息。
まだどうしたら良いのか分からない千代子の手を握って、唇が擦り合うだけのキス。
「ん……」
鼻から抜ける甘い呻き。
今夜はちゃんと起きている千代子の手が司の腕に添えられるとぎゅ、と指先に力が入る。
体勢が崩れてソファーに半分、押し倒してしまった事に気づく頃にはもうくったりと力の抜けきった千代子の体があった。アルコールだけのせいではない上気した頬が照明に薄赤く、濡れた唇はちらりと光る。
「ちよちゃん、立てる?」
だめかも、と小さく言う唇。
互いに少し笑って、手を貸して。
膝が立たない、と恥ずかしそうに笑う千代子を司は自らの寝室に誘う。
「それでね……ちよちゃんには正直に、見せておかないといけない事があって」