千代子と司 ~スパダリヤクザは幼馴染みの甘い優しさに恋い焦がれる~


 あの料亭ならば司のみならず舎弟である二人が出入りしていてもおかしくない。昼間は一般人向けに気軽なランチ営業もやっているので千代子一人を料亭に呼んでも特に目立つことは無い。

「若?」
「私もいい加減、二人には彼女の事を紹介しようと思っていたんだ」

 話を切り出す司に芝山はいたく感激をしているようだったが松戸は……もう千代子とは連絡を取り合っている仲なので「やったー」と間延びした返事をすれば「お前が一番喜ぶかと思ったんだが私の見当違いだったか」と司に言われてしまった。

「いや、だって兄貴の彼女だし……ねえ、俺が喜んじゃったらまずいでしょう」
「それはそうだな」

 ウラでやり取りしているなど直接言ったらやはり殴られそうだな、と松戸は思う。別にワルイコトをしている訳じゃ無い。仕事の相談や司の様子などを千代子と共有しているだけ。

 千代子にもいい刺激になるだろうと司は考え、予定を作ろうと三人は話を始める。


 その日の夜、帰宅した司からの食事会の提案に快諾する千代子がいた。
 松戸とはもう縁が出来てしまっているがいつも司のそばにいると言う芝山と言う人がどのような人となりなのか、話だけは松戸からも聞いていたので気になっていた。

 夕食と軽い晩酌を終え、カウンターキッチンのシンクでグラスを流していた千代子はふと、司が何か言いたそうな雰囲気を醸し出している事に気が付き、グラスを片付けると司の座っているソファーの横まで近寄る。以前、司が千代子を傷つけそうになった時以来、二人はベッドを共にしていなかった。

 まだ早い、と司は大きな自責の念で千代子を誘う事が出来ず……やはり愛している人と暮らしているのだから正しい欲望を持って千代子には接したかった。

「私の事で、悩んでいますか?」

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