冷酷非道な精霊公爵様は偽物の悪役令嬢を離さない


「ああ〜美味しい!ね、お姉さまもそう思うでしょう?」

 シャルロッテはお気に入りのお菓子を食べながら嬉しそうにしている。

「おい、口に食べ物を入れたまま話をするな」

 フェイズが注意すると、アベリアはそれを見てくすくすと楽しそうに笑った。そんな二人を見ながら、シャルロッテはニヤニヤしている。

「お二人、少しは距離が縮んだように見えますね!私のおかげですね、お兄さま、褒めて褒めて!」
「ああ、うるさいな、わかった。お前のおかげだよ、ありがとうな」

 手をひらひらさせてフェイズが苦笑しながらそう言うと、シャルロッテは満足げだ。

「そういえば、これ」

 そう言って、フェイズは紙袋からひとつのお菓子をアベリアに差し出した。

「……!」
「好きなんだろう。妹が生まれてからは苦い思い出になっているのかもしれないけど、ここで俺たちと一緒に食べれば、楽しい思い出に変換される。お菓子に罪はないんだ、良い思い出だけ残せばいい」

 目を逸らしながら少しぶっきらぼうに言うフェイズからアベリアはお菓子を受け取って、大事そうにお菓子を見つめる。

「気にかけてくださったんですね。嬉しい!」
「話が見えないけど、とっても美味しそう!私も一緒に食べたい!」
「お前の分もちゃんとあるから安心しろ」

 そう言って、フェイズは紙袋からシャルロッテにお菓子を差し出す。そして自分の分もとってさっさとお菓子を食べ始めた。

「お、うまいなこれ」
「先に食べるなんてずるいわお兄さま!……あ、本当だ美味しい!」

 フェイズとシャルロッテの様子を嬉しそうに眺めながら、アベリアは大事に握っていたお菓子の包装をとり、口に入れてまた嬉しそうに微笑んだ。

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