冷酷非道な精霊公爵様は偽物の悪役令嬢を離さない
ふと、風がアベリアの側を通り抜けていく。人の気配がして後ろを振り返ると、そこには見知らぬ年配の男性がいた。身なりはきちんとしており、どこかの貴族の遣いのように見える。
「すみません、こちらのお屋敷は精霊公爵様のお屋敷で間違いないでしょうか?」
「はい、そうですが……何か御用でしょうか?」
返事をすると、男性は眉を顰めてアベリアを見た。
「そうですか。主人から精霊公爵様へ渡す書類をお預かりしてきたのですが、公爵様はおいででしょうか?」
「申し訳ありません。仕事で出掛けております。可能であれば私がお預かりしますが」
「あなたは……もしかして精霊公爵様の婚約者?ということはあの噂に名高い悪役令嬢の……」
男性はさらに眉を顰めて嫌悪感の眼差しをアベリアへ向ける。アベリアはその視線を受けて一瞬体をこわばらせるが、笑顔を崩さなかった。
(やっぱり、悪役令嬢の噂はどこにでも流れているものなのね)
「精霊公爵に悪役令嬢か。全く、お似合いだな。悪役令嬢を婚約者にするくらいだ、精霊公爵もやはり冷酷非道というのは本当なんだろうな。主人から直接書類を渡すようにと言われた時には本当に嫌な役目を背負わされたものだと思ったが、いないならそれはそれで会わなくていいし怖い思いをしなくて済む」
男性は冷ややかな視線をアベリアと屋敷に向けながらそう吐き捨てる。その言葉に、アベリアは腹の底から沸々と怒りが湧き上がる。怒りに任せてしまいそうになるのを抑え、アベリアは一つ深呼吸をしてから口を開いた。
「すみません、こちらのお屋敷は精霊公爵様のお屋敷で間違いないでしょうか?」
「はい、そうですが……何か御用でしょうか?」
返事をすると、男性は眉を顰めてアベリアを見た。
「そうですか。主人から精霊公爵様へ渡す書類をお預かりしてきたのですが、公爵様はおいででしょうか?」
「申し訳ありません。仕事で出掛けております。可能であれば私がお預かりしますが」
「あなたは……もしかして精霊公爵様の婚約者?ということはあの噂に名高い悪役令嬢の……」
男性はさらに眉を顰めて嫌悪感の眼差しをアベリアへ向ける。アベリアはその視線を受けて一瞬体をこわばらせるが、笑顔を崩さなかった。
(やっぱり、悪役令嬢の噂はどこにでも流れているものなのね)
「精霊公爵に悪役令嬢か。全く、お似合いだな。悪役令嬢を婚約者にするくらいだ、精霊公爵もやはり冷酷非道というのは本当なんだろうな。主人から直接書類を渡すようにと言われた時には本当に嫌な役目を背負わされたものだと思ったが、いないならそれはそれで会わなくていいし怖い思いをしなくて済む」
男性は冷ややかな視線をアベリアと屋敷に向けながらそう吐き捨てる。その言葉に、アベリアは腹の底から沸々と怒りが湧き上がる。怒りに任せてしまいそうになるのを抑え、アベリアは一つ深呼吸をしてから口を開いた。