【書籍化】私の人生は私のものです

 私がロシノアール王国に来てから、あっと言う間に日は過ぎた。

 伯父様からの連絡では、アキーム様がまたジーリン家にやってきたらしい。
 ここにはいないと伝え、屋敷の中を気が済むまで見せてあげたらしい。

 ジーリン家にはいないと諦めて、今は私の行方を捜しているらしいけど、普段は絶対に見つからない所にいるので安心だ。

 ミリアーナ様のことをミリー様と呼ぶほど仲良くなった頃、リファルド様から久しぶりに会わないかと連絡がきた。

 リファルド様とは手紙でやり取りをしていたけど、会うのは久しぶりだった。

 私が動くと万が一、アキーム様に出会ってしまった場合に良くないので、リファルド様が寮まで足を運んでくれることになった。

「キールから聞いたが、ティアトレイに興味があるらしいな」
「はい。ここ最近、世界中で人気だと聞きましたので」

 キールというのは、リファルド様がお世話になっている公爵家の嫡男であり、ミリー様の婚約者の名前だ。

 キール様は物腰柔らか。リファルド様は俺様。といった感じなのでゼノンと同じくタイプが違うから、仲が良いのかもしれない。

 リファルド様が話をしているのは、メイドが飲み物や食べ物を運ぶために使う、丸型のシルバートレイを改造した防具のことだ。若い女性の間で流行っているらしく、商品名はティアトレイという。
 
 ミリー様からすすめられたのだが、値段がお高めなので、これからのことを考えると買うことができなかった。

 ミリー様のものを見せてもらうと、見た目は普通のシルバートレイで一般のものと違いがあるようには思えなかった。

「オルドリン伯爵の動きが怪しいから、君に渡しておく」

 リファルド様はそう言うと、後ろに控えていた側近からシルバートレイを受け取ると、私に差し出したのだった。


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