【書籍化】私の人生は私のものです
22 新たな生活 ③
ティアトレイには取り扱い説明書があったけど、そう、難しいことが書かれているわけではなかった。
対象年齢は十五歳以上であること。
自分を守るためだけに使うことが強調されていた。
ミリー様も寮生活なので、仕事が終わったあと、夕食を共にすることが多い。
だから、すでにティアトレイを使ったことのある、ミリー様に体験談を聞いてみた。
「ティアトレイはどういう時に使うものなんでしょうか」
「私の場合は話が通じない相手に使っていますね。あ、自分から先に手を出してはいけませんよ。向こうから手を出してこようとしたり、手を出してきた時に使うようにしてくださいね。先に手を出すと、相手と同じレベルになりますから。それに世間はどんな理由があろうとも暴力をふるったほうが悪いと言います。たとえ、先に言葉の暴力を受けたとしても駄目です」
「わかりました。使う機会がないことが一番良いのでしょうけど、その時が来れば使ってみます」
「でも、リファルド様はどうしてそこまでサブリナ様の世話を焼くんですかね」
不思議そうにするミリー様に苦笑して答える。
「強くなる私を見たいと教えてもらいましたが、それとは違うのかなって。……いじめられていた記憶って、中々、忘れられないものなんですよ。だから、私が良くない道を選ぶのではないかと心配してくれているのかなと思っています」
「体の傷も残るものはありますが、言葉の暴力は心の傷ですから、本人がどう気持ちを切りかえられるかですものね。心の綺麗な人ほど、自分を責めてしまいますし」
ミリー様は頷いてから続ける。
「実際、そんな人達は、たとえサブリナ様が死を選んでも、そんな気はなかったで終わります。気にしているだけ無駄ですよ。仲良くしたいと思ってくれる人と仲良くしたら良いと思います」
「ありがとうございます。そうすることにします」
今まで、同年代の人と、こんな風に真面目な話をすることはなかった。
友達ってこういうものなんだろうか。
勝手に友達だと思ってしまっても良いのか、そちらも気になっていると、ミリー様が笑顔で話しかけてきた。
「私とは仲良くしてくれると嬉しいです。悲しいことにお友達がいないもので」
「私もです! よろしくお願いいたします!」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ミリー様と私はお互いに頭を下げた。
*****
次の日から、早速、ティアトレイに慣れることに決めた。
一時期はティアトレイで素振りをしていたと、ミリー様から教えてもらったので、私も毎日、やってみることにする。
思ったよりも重いので、腕の筋肉がつけば良いなと思う。
ここ最近は顔色も良くなってきたし、自分が生きているのだと感じられる気がした。
ティアトレイの必要性を感じずにいられないのは、リファルド様に会った時に、両親のことを教えてもらったからだ。
なんと、お父様はお母様と離婚すると言い出した。
領地の管理が自分ではできないから、子爵の座を放棄したくなったのだ。
現在、お母様は泣き縋って止めているんだそうだ。
あんな人のどこが良いのか、私にはさっぱりわからない。
でも、私があの人の血を引いていることは確かだ。
どす黒い感情が、どうしても湧き上がるのは、そのせいなんだろうか。
とにかく、今日は良い日だった。
幸せな気持ちを思い出して眠りについた次の日、リファルド様から手紙が届いた。
内容はお父様とお母様の離婚が成立したことと、なぜ、成立したかの理由が書いてあった。
リファルド様は子爵家にスパイを入れてくれているから、早くにわかった話だった。
離婚成立が衝撃だったこともあるけど、その後の話にも驚いた。
お父様はお母様にも暴力をふるい、無理やり、離婚を認めさせたというのだ。
そんな酷い目にあっても、お母様はお父様のことが好きなんだそうだ。
きっと、今までの私もアキーム様に対して、そんな気持ちだったんだろう。
目を覚ませて本当に良かった。
そう思った次の日に、伯父様から連絡が来た。
お母様が爵位を返上し、お父様の所へ向かったこと。お父様が私を逆恨みしているようだと書かれていた。
この様子だとティアトレイはアキーム様よりも先に、お父様に使うことになりそうだわ。
対象年齢は十五歳以上であること。
自分を守るためだけに使うことが強調されていた。
ミリー様も寮生活なので、仕事が終わったあと、夕食を共にすることが多い。
だから、すでにティアトレイを使ったことのある、ミリー様に体験談を聞いてみた。
「ティアトレイはどういう時に使うものなんでしょうか」
「私の場合は話が通じない相手に使っていますね。あ、自分から先に手を出してはいけませんよ。向こうから手を出してこようとしたり、手を出してきた時に使うようにしてくださいね。先に手を出すと、相手と同じレベルになりますから。それに世間はどんな理由があろうとも暴力をふるったほうが悪いと言います。たとえ、先に言葉の暴力を受けたとしても駄目です」
「わかりました。使う機会がないことが一番良いのでしょうけど、その時が来れば使ってみます」
「でも、リファルド様はどうしてそこまでサブリナ様の世話を焼くんですかね」
不思議そうにするミリー様に苦笑して答える。
「強くなる私を見たいと教えてもらいましたが、それとは違うのかなって。……いじめられていた記憶って、中々、忘れられないものなんですよ。だから、私が良くない道を選ぶのではないかと心配してくれているのかなと思っています」
「体の傷も残るものはありますが、言葉の暴力は心の傷ですから、本人がどう気持ちを切りかえられるかですものね。心の綺麗な人ほど、自分を責めてしまいますし」
ミリー様は頷いてから続ける。
「実際、そんな人達は、たとえサブリナ様が死を選んでも、そんな気はなかったで終わります。気にしているだけ無駄ですよ。仲良くしたいと思ってくれる人と仲良くしたら良いと思います」
「ありがとうございます。そうすることにします」
今まで、同年代の人と、こんな風に真面目な話をすることはなかった。
友達ってこういうものなんだろうか。
勝手に友達だと思ってしまっても良いのか、そちらも気になっていると、ミリー様が笑顔で話しかけてきた。
「私とは仲良くしてくれると嬉しいです。悲しいことにお友達がいないもので」
「私もです! よろしくお願いいたします!」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ミリー様と私はお互いに頭を下げた。
*****
次の日から、早速、ティアトレイに慣れることに決めた。
一時期はティアトレイで素振りをしていたと、ミリー様から教えてもらったので、私も毎日、やってみることにする。
思ったよりも重いので、腕の筋肉がつけば良いなと思う。
ここ最近は顔色も良くなってきたし、自分が生きているのだと感じられる気がした。
ティアトレイの必要性を感じずにいられないのは、リファルド様に会った時に、両親のことを教えてもらったからだ。
なんと、お父様はお母様と離婚すると言い出した。
領地の管理が自分ではできないから、子爵の座を放棄したくなったのだ。
現在、お母様は泣き縋って止めているんだそうだ。
あんな人のどこが良いのか、私にはさっぱりわからない。
でも、私があの人の血を引いていることは確かだ。
どす黒い感情が、どうしても湧き上がるのは、そのせいなんだろうか。
とにかく、今日は良い日だった。
幸せな気持ちを思い出して眠りについた次の日、リファルド様から手紙が届いた。
内容はお父様とお母様の離婚が成立したことと、なぜ、成立したかの理由が書いてあった。
リファルド様は子爵家にスパイを入れてくれているから、早くにわかった話だった。
離婚成立が衝撃だったこともあるけど、その後の話にも驚いた。
お父様はお母様にも暴力をふるい、無理やり、離婚を認めさせたというのだ。
そんな酷い目にあっても、お母様はお父様のことが好きなんだそうだ。
きっと、今までの私もアキーム様に対して、そんな気持ちだったんだろう。
目を覚ませて本当に良かった。
そう思った次の日に、伯父様から連絡が来た。
お母様が爵位を返上し、お父様の所へ向かったこと。お父様が私を逆恨みしているようだと書かれていた。
この様子だとティアトレイはアキーム様よりも先に、お父様に使うことになりそうだわ。