【書籍化】私の人生は私のものです
23 人は変わることができるのか ①
順調に日々を過ごしていたある日、城でメイドとして働いている女性から、私と同じ名前の女性が家出人として平民の間で捜索されているという話を聞いた。
しかも、見つけた人には謝礼金を出すというのだ。
私は平民どころか、この国の貴族にもあまり知られていない。
だから、もし、居場所がバレてしまうのなら、城内で働いている人が教えたということになる。
城内でのことは、城外で話すことは許されていないから見つかることはないと思うので安心だ。
でも、そんな手配を出したのは、一体、誰なのかしら。
考えられるとしたら、私の両親かアキーム様だ。
お母様はそんなことをする性格には思えない。
でも、お父様に私を連れ戻すことができれば、再婚しても良いなどと言われていたら、必死に私を捜すでしょう。
ただ、お父様と長く離れることによって冷静になることができるかもしれない。
私だって、アキーム様が家を離れることが多かったから疑いを持てたのだ。
今日は仕事の日だということで、このことを考えるのは終わりにして、気持ちを切り替えた。
******
何も動きがないまま日にちは過ぎた。
結局、私を捜しているのはお母様だとわかった。
お父様に再婚条件として、私とアキーム様の再婚を求められたらしい。
全てを捨てたお母様は、今はお父様に付きまとっていると聞いた。
お父様は新たな領地の人間との折り合いが悪く、逃げ回っているらしいから、お母様の存在は本当は邪魔なはずだ。
お父様がお母様を見捨てないのは、お母様になら、私が連絡するのではないかと思っているからだった。
お母様に叱られることはあっても、暴力をふるわれたことはない。
でも、お母さまを見ていると、昔の私を思い出して嫌な気分になる。
会いたくないという気持ちが強い。
「サブリナさんはやさしいので、いざというときにしんぱいです。ティアトレイにまほうをふよしてもらいましょう」
お母様が私を捜しているという話を聞いたラシル様が、ミリー様の婚約者のキール様に頼んで、ティアトレイに魔法を付与してくれることになった。
そして、数日後、預けていたティアトレイが返ってきた。
「キールさんがいっていましたが、かれのかけたまほうは、そのひとのせいかくによってこうりょくがかわるそうです。ミリアーナさんのばあいは、わるい人がふれると、やけどするそうです。サブリナさんのばあいは、どうなるかわかりません」
「そうなんですね」
ラシル様から返してもらったティアトレイは、特に何かが変わったようには見えない。
ロシノアール王国は王族や公爵家の血筋を引く人は魔法が使える。
でも、私が住んでいた国は魔法を使える人は誰一人いない。
だから、魔法を付与されたと言われても、なんだかピンとこなかった。
何にしても魔法の付与は大変なものだと聞くし、キール様にはお礼を言わなくちゃいけないわ。
大事にティアトレイを抱きしめて寮に帰ると、ロビーにリファルド様がいた。
「ど、どうしてこちらに!?」
「君の母親が罪を犯して警察に捕まった」
「……はい?」
「警察を使って、君を引きずり出そうとしている」
「……母は何をしたのでしょうか」
「平民がよく通う店で食い逃げをしようとしたらしい。すぐに捕まったが、その時に自分の名前をサブリナだと名乗ったそうだ」
「どうせすぐに嘘だとわかるのに、どうしてそんな嘘をついたのでしょうか」
「警察なら本人確認をするために、君の居場所を特定すると思ったんだろうな」
リファルド様は難しい顔をして続ける。
「君とコンタクトを取ろうとしていたが、君の身元保証はワイズ家がしているから先に連絡がきた」
「迷惑をおかけしてしまって申し訳ございません!」
「気にするな。どうする? 警察は君に話を聞きたいが、王城内には入れないから、外に出れるかと聞いてきている」
「ありがとうございます。これ以上、迷惑をかけられませんし行ってこようと思います」
「そうか。なら、一人では心配だ。俺も行く」
「え、あ、大丈夫です! 一人では行かないようにしますから」
気持ちは嬉しいので、丁重にお断りしてから続ける。
「きっと、お父様が私に近づいてくるでしょう。ティアトレイがどんな効果を発揮してくれるのか、試してみようと思います」
リファルド様は一瞬、驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔になって頷く。
「やっぱり俺も行く。君がどう変わったのか見たいからな」
昔よりも強くなっているはず。
その姿を見てもらわなくちゃ。
しかも、見つけた人には謝礼金を出すというのだ。
私は平民どころか、この国の貴族にもあまり知られていない。
だから、もし、居場所がバレてしまうのなら、城内で働いている人が教えたということになる。
城内でのことは、城外で話すことは許されていないから見つかることはないと思うので安心だ。
でも、そんな手配を出したのは、一体、誰なのかしら。
考えられるとしたら、私の両親かアキーム様だ。
お母様はそんなことをする性格には思えない。
でも、お父様に私を連れ戻すことができれば、再婚しても良いなどと言われていたら、必死に私を捜すでしょう。
ただ、お父様と長く離れることによって冷静になることができるかもしれない。
私だって、アキーム様が家を離れることが多かったから疑いを持てたのだ。
今日は仕事の日だということで、このことを考えるのは終わりにして、気持ちを切り替えた。
******
何も動きがないまま日にちは過ぎた。
結局、私を捜しているのはお母様だとわかった。
お父様に再婚条件として、私とアキーム様の再婚を求められたらしい。
全てを捨てたお母様は、今はお父様に付きまとっていると聞いた。
お父様は新たな領地の人間との折り合いが悪く、逃げ回っているらしいから、お母様の存在は本当は邪魔なはずだ。
お父様がお母様を見捨てないのは、お母様になら、私が連絡するのではないかと思っているからだった。
お母様に叱られることはあっても、暴力をふるわれたことはない。
でも、お母さまを見ていると、昔の私を思い出して嫌な気分になる。
会いたくないという気持ちが強い。
「サブリナさんはやさしいので、いざというときにしんぱいです。ティアトレイにまほうをふよしてもらいましょう」
お母様が私を捜しているという話を聞いたラシル様が、ミリー様の婚約者のキール様に頼んで、ティアトレイに魔法を付与してくれることになった。
そして、数日後、預けていたティアトレイが返ってきた。
「キールさんがいっていましたが、かれのかけたまほうは、そのひとのせいかくによってこうりょくがかわるそうです。ミリアーナさんのばあいは、わるい人がふれると、やけどするそうです。サブリナさんのばあいは、どうなるかわかりません」
「そうなんですね」
ラシル様から返してもらったティアトレイは、特に何かが変わったようには見えない。
ロシノアール王国は王族や公爵家の血筋を引く人は魔法が使える。
でも、私が住んでいた国は魔法を使える人は誰一人いない。
だから、魔法を付与されたと言われても、なんだかピンとこなかった。
何にしても魔法の付与は大変なものだと聞くし、キール様にはお礼を言わなくちゃいけないわ。
大事にティアトレイを抱きしめて寮に帰ると、ロビーにリファルド様がいた。
「ど、どうしてこちらに!?」
「君の母親が罪を犯して警察に捕まった」
「……はい?」
「警察を使って、君を引きずり出そうとしている」
「……母は何をしたのでしょうか」
「平民がよく通う店で食い逃げをしようとしたらしい。すぐに捕まったが、その時に自分の名前をサブリナだと名乗ったそうだ」
「どうせすぐに嘘だとわかるのに、どうしてそんな嘘をついたのでしょうか」
「警察なら本人確認をするために、君の居場所を特定すると思ったんだろうな」
リファルド様は難しい顔をして続ける。
「君とコンタクトを取ろうとしていたが、君の身元保証はワイズ家がしているから先に連絡がきた」
「迷惑をおかけしてしまって申し訳ございません!」
「気にするな。どうする? 警察は君に話を聞きたいが、王城内には入れないから、外に出れるかと聞いてきている」
「ありがとうございます。これ以上、迷惑をかけられませんし行ってこようと思います」
「そうか。なら、一人では心配だ。俺も行く」
「え、あ、大丈夫です! 一人では行かないようにしますから」
気持ちは嬉しいので、丁重にお断りしてから続ける。
「きっと、お父様が私に近づいてくるでしょう。ティアトレイがどんな効果を発揮してくれるのか、試してみようと思います」
リファルド様は一瞬、驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔になって頷く。
「やっぱり俺も行く。君がどう変わったのか見たいからな」
昔よりも強くなっているはず。
その姿を見てもらわなくちゃ。