【書籍化】私の人生は私のものです
31 私の人生は私のものです ⑤
「うわあっ!」
ティアトレイがアキーム様に反応しないわけがない。
アキーム様は情けない声をあげて手を引っ込め、触れた指を押さえながら涙目で私に向かって叫ぶ。
「い、一体、なんなんだよ、それは!?」
「用途については、先程、説明したと思いますが」
「そ、そういうことじゃない! と、どうして、しょ、しょ、そ、そんなことになるのか、き、聞いてるんだよ!?」
「そんなこととは?」
「さ、触った、だ、だけで、ぜ、全身がし、しび、痺れるんだ!」
ティアトレイの効果のせいで上手く話せなくなっているみたい。
ダメージを与えられたみたいで良かったわ。
「なぜ、そんなことになるかと言いますと、あなたが私の敵だからです」
「そんな、ひ、ひどいことを、い、言わないで、くれ!」
「そうよ! アキームが何をしたって言うの!」
エレファーナ様がヒステリックに叫んだので、これ見よがしにため息を吐いてから笑顔で言う。
「静かにしていてほしかったんですが、お二人共、まだ、お元気そうですし、話せないようにしてさしあげますね」
「ひっ!」
アキーム様は情けない声を上げると、周りには多くの人がいるというのに、椅子を押しのけて床に額をつける。
「申し訳ございませんでした! まさか、あなたがそんな人だとは思っていなかったんです!」
「……では、もう二度と付きまとうことはないということでよろしいですね?」
そんな人という意味がわからない。
でも、いちいちそんなことを確認する気にもならなかった。
「もちろんです! もう二度と、あなたの目の前には現れません! ですから、その」
アキーム様は顔を上げて、私が握りしめているティアトレイを見つめた。
「これを使わないでほしいと言いたいんですか?」
「そ、そうです!」
よっぽど痛かったみたい。
でも、先程よりも話せるようになっているということは、効き目が薄れているということかしら。
思った以上に早いわね。
まあ、いいわ。
自分が痛いと思うことは嫌がる人だから、二度と、私の前には現れないでしょう。
しばらく監視をしてもらって、大丈夫だとわかるまでは安心はできないけれど、この様子だと、私の顔なんて見たくなくなったでしょうね。
「……わかりました。あなたがもう二度と私の目の前に現れず、ラファイ伯爵令嬢のことも責任を持って面倒を見るというのであれば許しましょう」
「も、もちろんです! ベルのことも大事に……、うああああっ、あの、や、やめてください!」
ティアトレイに触れてもいないのに、しびれを感じたのか、アキーム様は顔を歪める。
嘘をついたらしびれるようになっているみたい。
しかも、持続するみたいだわ。
これなら、誰でも彼の嘘を見抜くことができる。
「本当に大事にするんですね?」
「はい、本当っ、ぎゃあああっ」
普段は静かなレストラン内にアキーム様の絶叫が響く。
何がなんだかわからないといった表情だった、エレファーナ様が立ち上がって叫ぶ。
「サブリナさん! シルバートレイをテーブルの上に置きなさい!」
「どうして、そんなことを命令されないとならないのです?」
「危険だからに決まっているでしょう!」
「私からすれば、エレファーナ様のほうが危険です」
「ふざけたことを言わない」
怒りに任せて叫ぼうとしたようだけど、私がティアトレイを掲げるようにして見せると大人しくなった。
どうせ、賢くないのなら、そのままさっきのように手を出してくれれば良かったのに――
「あの、本当にすみませんでした。僕は怖い女性は苦手なんで、もう二度と付きまといませんので!」
アキーム様がまた額を床につけて謝る。
「アキーム様」
「な、なんでしょうか」
「お聞きしたいことがあります」
これで終わりじゃない。
今日は関係者に集まってもらっているんだから、全てはっきりさせてから終幕といきましょう。
「私と結婚していた当時のあなたの浮気相手は、ラファイ伯爵令嬢だけだったのでしょうか」
「ど、どういうことかな」
「そのままの意味です。他に浮気相手はいなかったんですか?」
もし、嘘の言葉を発したら、彼の体はしびれて苦痛の表情になるはずだ。
「い、い、いません」
アキーム様の額から大粒の汗が流れ落ちる。
明らかに嘘をついているのに、平気そうな顔をしているアキーム様を見て不思議に思った瞬間、彼は断末魔のような叫び声を上げてのたうち回る。
その様子に引いてしまっていると、近くのテーブルに座っていた女性が立ち上がって近寄ってきた。
彼女は今回の特別ゲストで、リファルド様が見つけ出した、アキーム様と関係のある女性だ。
その女性はアキーム様のところまでやって来ると、のたうち回っている彼のお腹を蹴った。
「あんた、嫁と別れてあたしと結婚するって言っていたじゃないか!」
ふっくらとした体型の女性はそう叫びながら、アキーム様に攻撃を加える。
「やめ、た、助けて!」
「やめなさい!」
エレファーナ様が女性の体を押しやって攻撃を止めさせる。
止められた女性は、興奮状態で肩で何度も息をして叫ぶ。
「この大嘘つきが!」
たくましい女性を見て、アキーム様が私にこだわった理由がはっきりとわかった。
彼の好む女性は気の強い人だ。
でも、そんな人達ばかりでは疲れるから、私のような気の弱い女性も一人は近くに置いておきたかったのだ。
ティアトレイがアキーム様に反応しないわけがない。
アキーム様は情けない声をあげて手を引っ込め、触れた指を押さえながら涙目で私に向かって叫ぶ。
「い、一体、なんなんだよ、それは!?」
「用途については、先程、説明したと思いますが」
「そ、そういうことじゃない! と、どうして、しょ、しょ、そ、そんなことになるのか、き、聞いてるんだよ!?」
「そんなこととは?」
「さ、触った、だ、だけで、ぜ、全身がし、しび、痺れるんだ!」
ティアトレイの効果のせいで上手く話せなくなっているみたい。
ダメージを与えられたみたいで良かったわ。
「なぜ、そんなことになるかと言いますと、あなたが私の敵だからです」
「そんな、ひ、ひどいことを、い、言わないで、くれ!」
「そうよ! アキームが何をしたって言うの!」
エレファーナ様がヒステリックに叫んだので、これ見よがしにため息を吐いてから笑顔で言う。
「静かにしていてほしかったんですが、お二人共、まだ、お元気そうですし、話せないようにしてさしあげますね」
「ひっ!」
アキーム様は情けない声を上げると、周りには多くの人がいるというのに、椅子を押しのけて床に額をつける。
「申し訳ございませんでした! まさか、あなたがそんな人だとは思っていなかったんです!」
「……では、もう二度と付きまとうことはないということでよろしいですね?」
そんな人という意味がわからない。
でも、いちいちそんなことを確認する気にもならなかった。
「もちろんです! もう二度と、あなたの目の前には現れません! ですから、その」
アキーム様は顔を上げて、私が握りしめているティアトレイを見つめた。
「これを使わないでほしいと言いたいんですか?」
「そ、そうです!」
よっぽど痛かったみたい。
でも、先程よりも話せるようになっているということは、効き目が薄れているということかしら。
思った以上に早いわね。
まあ、いいわ。
自分が痛いと思うことは嫌がる人だから、二度と、私の前には現れないでしょう。
しばらく監視をしてもらって、大丈夫だとわかるまでは安心はできないけれど、この様子だと、私の顔なんて見たくなくなったでしょうね。
「……わかりました。あなたがもう二度と私の目の前に現れず、ラファイ伯爵令嬢のことも責任を持って面倒を見るというのであれば許しましょう」
「も、もちろんです! ベルのことも大事に……、うああああっ、あの、や、やめてください!」
ティアトレイに触れてもいないのに、しびれを感じたのか、アキーム様は顔を歪める。
嘘をついたらしびれるようになっているみたい。
しかも、持続するみたいだわ。
これなら、誰でも彼の嘘を見抜くことができる。
「本当に大事にするんですね?」
「はい、本当っ、ぎゃあああっ」
普段は静かなレストラン内にアキーム様の絶叫が響く。
何がなんだかわからないといった表情だった、エレファーナ様が立ち上がって叫ぶ。
「サブリナさん! シルバートレイをテーブルの上に置きなさい!」
「どうして、そんなことを命令されないとならないのです?」
「危険だからに決まっているでしょう!」
「私からすれば、エレファーナ様のほうが危険です」
「ふざけたことを言わない」
怒りに任せて叫ぼうとしたようだけど、私がティアトレイを掲げるようにして見せると大人しくなった。
どうせ、賢くないのなら、そのままさっきのように手を出してくれれば良かったのに――
「あの、本当にすみませんでした。僕は怖い女性は苦手なんで、もう二度と付きまといませんので!」
アキーム様がまた額を床につけて謝る。
「アキーム様」
「な、なんでしょうか」
「お聞きしたいことがあります」
これで終わりじゃない。
今日は関係者に集まってもらっているんだから、全てはっきりさせてから終幕といきましょう。
「私と結婚していた当時のあなたの浮気相手は、ラファイ伯爵令嬢だけだったのでしょうか」
「ど、どういうことかな」
「そのままの意味です。他に浮気相手はいなかったんですか?」
もし、嘘の言葉を発したら、彼の体はしびれて苦痛の表情になるはずだ。
「い、い、いません」
アキーム様の額から大粒の汗が流れ落ちる。
明らかに嘘をついているのに、平気そうな顔をしているアキーム様を見て不思議に思った瞬間、彼は断末魔のような叫び声を上げてのたうち回る。
その様子に引いてしまっていると、近くのテーブルに座っていた女性が立ち上がって近寄ってきた。
彼女は今回の特別ゲストで、リファルド様が見つけ出した、アキーム様と関係のある女性だ。
その女性はアキーム様のところまでやって来ると、のたうち回っている彼のお腹を蹴った。
「あんた、嫁と別れてあたしと結婚するって言っていたじゃないか!」
ふっくらとした体型の女性はそう叫びながら、アキーム様に攻撃を加える。
「やめ、た、助けて!」
「やめなさい!」
エレファーナ様が女性の体を押しやって攻撃を止めさせる。
止められた女性は、興奮状態で肩で何度も息をして叫ぶ。
「この大嘘つきが!」
たくましい女性を見て、アキーム様が私にこだわった理由がはっきりとわかった。
彼の好む女性は気の強い人だ。
でも、そんな人達ばかりでは疲れるから、私のような気の弱い女性も一人は近くに置いておきたかったのだ。