【書籍化】私の人生は私のものです
33 私の人生は私のものです ⑦
それから、数日後、レストランの個室でリファルド様に感謝の気持ちを述べたあと、これからは少しずつになるかもしれないけど、リファルド様に頼ることなく、一人でやっていくと話をした。
でも、返ってきた言葉は予想外のものだった。
「駄目に決まっているだろう」
「……はい?」
「君と俺との関係は他の人間の中では婚約者同士という扱いだ」
「……はい!?」
「まさか、気を遣って離れようとするとは思わなかったな。俺のために何かしようとするのだと思っていた。これも思い込みというやつだな」
「あの、こんなにお世話していただけだなんて思ってもいなかったので本当に感謝しております! ですから、何かできることがありましたらお申し付けください!」
「じゃあ、俺の願いを言うぞ。俺の婚約者になってくれ」
ありえないわ。
どうして、リファルド様が私を選ぶのよ。
呆気にとられている私を見て、リファルド様はにやりと笑ってから続ける。
「君の人生だ。どうしても嫌なら断れば良い」
「……リファルド様は意地悪なのか、優しいのかわかりませんね」
憎まれ口を叩くと、リファルド様は頷く。
「俺は変人だから婚約者が見つからないんだ。年齢的にも相手を見つけないと周りがうるさくてな」
「次期公爵が自分を変人だなんて言っても良いんですか?」
「君の前だけだから良い」
公爵夫人だなんて、私では力不足な気がするけど、やる前から諦めちゃ駄目よね。
昔の自分とは違うのよ。
というか、それよりも大事なことがあるわ。
「私は平民なんです。ですから、公爵家に嫁入りは無理なのではないでしょうか」
「そのことだが、ジーリン伯爵が君を養女に迎えると言っていた」
「伯父様が!?」
「今まで何もしなかった分の罪滅ぼしをしたいんだとさ」
「そんな。私が悪いのに罪滅ぼしだなんて」
「うだうだ言わなくていいから、返事だけ聞かせてくれ。俺の嫁になるのが嫌なのか?」
「……嫌なわけがないじゃないですか」
恥ずかしくて俯きそうになるのを何とかこらえ、目を逸らさずに答えると、リファルド様は満足そうに微笑んだ。
******
また日は過ぎてレストランの一件から約10日後、警察から連絡がきた。
以前、エレファーナ様がどうしたら苦痛から逃れられるかという質問に、「人を傷つけるような発言や行為をしなければ、しびれがなくなります」と伝えてもらった。
エレファーナ様は自分自身が苦しむことにより、自分のやっていたことが人の心を傷つけていたのだと、やっとわかったみたいだった。
というか、わからざるを得なかったのかもしれない。
少しでも、彼女が悪いことを思うと全身にしびれが走って動けなくなるからだ。
逆に人に良いことをすると、痛みが和らぐので慈善事業を始めると言い出したらしい。
でも、オリンドル伯爵家はアキーム様が捕まったことにより、男爵に降格することになったため、そんな余裕がなくなるということを、彼女はまだ知らない。
アキーム様はキール様が回復魔法で体を治したため、元気にはなった。
そうじゃないと、例の女性が暴行罪で捕まってしまうからだ。
それに、詐欺被害者が次々と見つかったため、慰謝料を支払うことが決まったので働いてもらわないといけないということもある。
被害者の多くはアキーム様に愛想を尽かした。
でも、平民の女性は違った。
男爵に降格しようとも、貴族は貴族だ。
慰謝料はいらないから結婚しろと迫られているのだという。
ラファイ伯爵令嬢はアキーム様にではなく、エレファーナ様への恨みを募らせていて、彼女は使用人の気が弱い女性に命令し、エレファーナ様の殺害を企んだ。
でも、それは彼女を監視している人に止められただけでなく、警察に報告されて捕まった。
釈放はされたけれど、そんなことをした彼女をオルドリン家が受け入れるはずもなく、今は、ラファイ伯爵家に戻って使用人として働かされているそうだ。
彼女にしてみれば、かなりの屈辱でしょうね。
現在の私はジーリン家の養女となり、結婚するまではラシル様の世話係として働けることになった。
リファルド様も結婚を急がなくて良いと言ってくれている。
今は不安になってしまうくらいに幸せを感じている。
これから先、悲しいことや辛いことは生きていけば、必ず起こるはずだ。
その時にも私らしくいられるように、もっともっと強くなりたいと思った。
私にはリファルド様やゼノン達もいる。
ティアトレイも私の味方だ。
一人ではまだまだ強くなれないけれど、誰かのためにこうしたい、ああしたいと思える自分自身のために、生きていこうと思う。
でも、返ってきた言葉は予想外のものだった。
「駄目に決まっているだろう」
「……はい?」
「君と俺との関係は他の人間の中では婚約者同士という扱いだ」
「……はい!?」
「まさか、気を遣って離れようとするとは思わなかったな。俺のために何かしようとするのだと思っていた。これも思い込みというやつだな」
「あの、こんなにお世話していただけだなんて思ってもいなかったので本当に感謝しております! ですから、何かできることがありましたらお申し付けください!」
「じゃあ、俺の願いを言うぞ。俺の婚約者になってくれ」
ありえないわ。
どうして、リファルド様が私を選ぶのよ。
呆気にとられている私を見て、リファルド様はにやりと笑ってから続ける。
「君の人生だ。どうしても嫌なら断れば良い」
「……リファルド様は意地悪なのか、優しいのかわかりませんね」
憎まれ口を叩くと、リファルド様は頷く。
「俺は変人だから婚約者が見つからないんだ。年齢的にも相手を見つけないと周りがうるさくてな」
「次期公爵が自分を変人だなんて言っても良いんですか?」
「君の前だけだから良い」
公爵夫人だなんて、私では力不足な気がするけど、やる前から諦めちゃ駄目よね。
昔の自分とは違うのよ。
というか、それよりも大事なことがあるわ。
「私は平民なんです。ですから、公爵家に嫁入りは無理なのではないでしょうか」
「そのことだが、ジーリン伯爵が君を養女に迎えると言っていた」
「伯父様が!?」
「今まで何もしなかった分の罪滅ぼしをしたいんだとさ」
「そんな。私が悪いのに罪滅ぼしだなんて」
「うだうだ言わなくていいから、返事だけ聞かせてくれ。俺の嫁になるのが嫌なのか?」
「……嫌なわけがないじゃないですか」
恥ずかしくて俯きそうになるのを何とかこらえ、目を逸らさずに答えると、リファルド様は満足そうに微笑んだ。
******
また日は過ぎてレストランの一件から約10日後、警察から連絡がきた。
以前、エレファーナ様がどうしたら苦痛から逃れられるかという質問に、「人を傷つけるような発言や行為をしなければ、しびれがなくなります」と伝えてもらった。
エレファーナ様は自分自身が苦しむことにより、自分のやっていたことが人の心を傷つけていたのだと、やっとわかったみたいだった。
というか、わからざるを得なかったのかもしれない。
少しでも、彼女が悪いことを思うと全身にしびれが走って動けなくなるからだ。
逆に人に良いことをすると、痛みが和らぐので慈善事業を始めると言い出したらしい。
でも、オリンドル伯爵家はアキーム様が捕まったことにより、男爵に降格することになったため、そんな余裕がなくなるということを、彼女はまだ知らない。
アキーム様はキール様が回復魔法で体を治したため、元気にはなった。
そうじゃないと、例の女性が暴行罪で捕まってしまうからだ。
それに、詐欺被害者が次々と見つかったため、慰謝料を支払うことが決まったので働いてもらわないといけないということもある。
被害者の多くはアキーム様に愛想を尽かした。
でも、平民の女性は違った。
男爵に降格しようとも、貴族は貴族だ。
慰謝料はいらないから結婚しろと迫られているのだという。
ラファイ伯爵令嬢はアキーム様にではなく、エレファーナ様への恨みを募らせていて、彼女は使用人の気が弱い女性に命令し、エレファーナ様の殺害を企んだ。
でも、それは彼女を監視している人に止められただけでなく、警察に報告されて捕まった。
釈放はされたけれど、そんなことをした彼女をオルドリン家が受け入れるはずもなく、今は、ラファイ伯爵家に戻って使用人として働かされているそうだ。
彼女にしてみれば、かなりの屈辱でしょうね。
現在の私はジーリン家の養女となり、結婚するまではラシル様の世話係として働けることになった。
リファルド様も結婚を急がなくて良いと言ってくれている。
今は不安になってしまうくらいに幸せを感じている。
これから先、悲しいことや辛いことは生きていけば、必ず起こるはずだ。
その時にも私らしくいられるように、もっともっと強くなりたいと思った。
私にはリファルド様やゼノン達もいる。
ティアトレイも私の味方だ。
一人ではまだまだ強くなれないけれど、誰かのためにこうしたい、ああしたいと思える自分自身のために、生きていこうと思う。