結婚白紙にされた傷心女子は、再会した御曹司に求婚される。
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「……あ、空がもう茜色だ」
いつ部屋に帰ってきたのか覚えていない。ただ、帰ってきて泣き崩れた。気が抜けたのと出かける前からあっためまいが襲ってきたから、きっと寝てしまったのだろう。
立ち上がって茜色に染まる部屋に灯りをつけて洗面所に行くと、鏡を見た。
「目が真っ赤だ……明日仕事なのに冷やさなきゃ」
一度顔を洗い、タオルに保冷剤を巻いて目に当てる。明日までに治るか心配になる。
いや、仕事のことを考えなきゃ数時間前の出来事が思い出されてしまうから。
少し真っ赤だった目が戻ってきたのを確認してまたベッドに寝転がると部屋のインターホンが鳴った。
モニターを確認するとそこには手を振っている桃花がいた。