結婚白紙にされた傷心女子は、再会した御曹司に求婚される。
プリンにスプーンを入れて掬って口に運ぶ。相変わらず濃厚だけど甘さ控えめでとても美味しい。最近はあまり美味しいって思えなかったけど久しぶりに美味しく感じた。
「ねぇ、花耶?」
「ん?」
「何かあった、よね? 前は幸せそうだったのに今は辛そうだし、今まで泣いてたんでしょう?」
「……桃花にはお見通しかぁ、敵わないな」
あはは、と笑って見せると「当たり前でしょ」と彼女は言った。
だから意を決して、私はカバンに入れていた母子手帳とエコー写真を取り出して彼女の前に出した。
「私、妊娠したの」
「え? え? 妊娠? じゃあ、体調が悪くなってたのは悪阻だったってこと?」
「うん。そうだよ」
「じゃあ、父親は……優仁さん?」
私は頷いて、深呼吸をする。
「でも、別れた。今日、別れて来た」
「……えっ?」
「というか、フラれたの。好きな人がね、出来たんだって……っ」
そう告げれば、「は!?」と少し大きな声で彼女は強く言葉を発した。