結婚白紙にされた傷心女子は、再会した御曹司に求婚される。



 所長室に招かれ私は入室した。


「どうしたの? 珍しいわね」

「はい。お時間をいただいてすみません。所長にお話があって、伝えておこうと」

「え、なに? どうかした?」


 所長は優しい口調でそう問いかけてくれて少し安心する。だけど、話さなくてはと決意する。


「私、妊娠しました」

「え、妊娠? あなた、お付き合いしている方がいたの?」

「……はい、いました」


 そう言えば、所長は「籍は入れないの?」と私に聞いてくる。当然の質問だ。相手がいなきゃ、妊娠はしない。
 そして、その相手と結婚して出産が普通だ。


< 26 / 60 >

この作品をシェア

pagetop