結婚白紙にされた傷心女子は、再会した御曹司に求婚される。
「花耶、少しだけ顔色良くなったんじゃない?」
「え、そうかな。点滴のおかげかも……吐き気もないし。でもベッドとお友達になってるけどね」
桃花は鞄から袋を取り出して中身を出した。
「これは頼まれてた母子手帳」
「ありがと、桃花。母子手帳だけは部屋に置いたから助かった」
「ううん。服も適当に持ってきたよ」
「本当ありがとう。退院する時どうしようって思ってたから制服で帰るわけにはいかないし」
本当に桃花が友達でよかったし、同じ寮でよかった。
寮暮らしじゃなかったら桃花でも入れなかったと思うし。
「いいよ、いいよ。そういえば、花耶を助けて救急車呼んでくれたのここの病院の人なんだけど会った?」
「えっ、会社の人じゃないの?」
「あれ聞いてない? 倒れそうになった時に受け止めてくれたんだよ。確か、清水川さんって言ってたかな……確か、清水川伊誓さんだ。それでその人が救護室まで運んでくれて、救急車も呼んでくれたの」
「病院の人もそういうの教えてもらってないから知らなかったよ」
なんで誰も言ってくれなかったんだ……教えてよ。このままだったら助けてもらったことさえ知らないままだったし、お礼も言えないままだった。