結婚白紙にされた傷心女子は、再会した御曹司に求婚される。



 そんな砕けた言葉を言っている彼の横顔を見てやっぱりあの頃と同じ顔をしていて思い切って聞いてみることにした。


「清水川さん。あの学校同じだって言ってましたよね」

「え? うん」

「間違っていなかったらいいんですけど、清水川さんはよく旧校舎の近くにある自販機の前にいた金髪の人ですよね。確か、同じような人に“チカさん”って呼ばれてました」

「うん、正解。俺のこと知っていたんだ」

「確信が持てなくて、聞けなくて。有名でしたよ、自販機の君なんてみんなが話していました。私も聞いてましたし、一度お会いしたことがあって百円玉を落としてしまった時にご馳走してもらいました」


 あの頃は綺麗な金髪だったけど、今も髪は綺麗だし長髪なのは変わらないのだななんて思ったりする。


「そうなの? 確かに自販機周辺にはいたけど、その呼び名は知らなかった」


 そんなくだらない話をしてお昼が終わる頃、私は清水川先生に病室まで送ってもらいゆっくりとその日は過ごした。
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